↓ここが一番良かった。著者はリープフロッグと呼んでいるが、茹でガエル現象ともいう。
これまでスマートフォンの仮想キーボードを頻繁に使っていた人たち(とくに、フリック入力方式に習熟していた人たち)は、音声入力の価値を過小評価し、それを利用できることを知っていても利用していない人が多いのではないかと思われます。つまり、スマートフォンの使い方が、携帯電話時代のものに固定化されているわけです。
音声入力はテキスト入力方式として、非連続的な革新の部類に入ると思う。キーボードもフリック入力も、手と指を使って一文字ずつ入力していくという点で連続的だが、音声入力は利用する器官が全く違うし、文字ではなく文章の単位で入力していく点も大きく違う。まるで、携帯電話のメールのかな漢字変換の革新を彷彿とさせる(初期の携帯電話は文節単位のかな漢字変換ができず、メールの文章を打つ時は「ぶんしょう」と打って「文章」に変換するのではなく「ぶん」と打って「文」に変換し、次に「しょう」と打って「章」に変換する、というやり方しかできなかった)。
俺も音声入力に前から興味はあったものの、積極的に使ってきたとはいえなかった(いざ文章を話そうとすると言葉が出てこなくて疲れるので)。タイマーのセットと Google 検索をたまに、くらいで、長い文章を入力することはほとんどやらず(できず)、この文章もキーボードで書いている。だが、全く新しいものが登場したときに、これまで慣れたやり方に固執して新しいものを軽く見る態度はとても良くない。頭ではわかっていてもだんだん考え方から柔軟性が失われていくのが老化だ。だから音声入力に挑戦することは、自分が茹でガエルにならないためのいいきっかけになると思う。
- 作者: 野口悠紀雄
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/05/20
- メディア: Kindle版
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以下、ハイライトした箇所。
これまでスマートフォンの仮想キーボードを頻繁に使っていた人たち(とくに、フリック入力方式に習熟していた人たち)は、音声入力の価値を過小評価し、それを利用できることを知っていても利用していない人が多いのではないかと思われます。つまり、スマートフォンの使い方が、携帯電話時代のものに固定化されているわけです。
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とくに愕然としたのは、「自分は話す内容を持っていない」と気付く場合があることです。散歩時間にスマートフォンに話しかけようとしても、何も出てこないことがあるのです。つまり、「私は何も考えを持っていない」ということです。 当たり前のことですが、話す内容を持っていなければ、いかに音声入力機能が発達しても、無意味です
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「文字を書く」という作業が簡単ではなかったからです。それを意識するようになったのは、「話す」という行為自体は、格別の努力なしにもできる簡単なものだからでしょう。「それにもかかわらず、話せないのは、話す内容を持っていないからだ」ということが、明白になってしまったのです。
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ITの進歩については、「一時的で暫定的な技術なのか、あるいは将来発展していく技術なのか」の見極めを行なうことが必要です。
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これまでは書くスピードに限界があったので、「考えていることのすべてを書き終わらないうちに忘れてしまう」ということもありました。
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したがって「メモすべきかどうか」などと思い悩まず、なんでもメモしたほうがよいのです。「
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思いついたこと、アイディア、新聞や書籍に書いてあったこと、買いたい書籍、買いたいもの等々。どんなことでもメモできるし、したほうがよいでしょう。そのうちに使い方が分かってきますし、
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Gmailには、タグをつける機能などがありますが、それらは一切使用していません。「あるときに重要と考えてつけたタグが、その後重要でなくなり、新しいキーワードが重要になる」ということがしばしば発生するからです。検索機能が強力であれば、タグは不必要なのです(
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むしろ、論理構成がはっきりせず、できるだけ長いほうがよいのです。ですから、思いついたことを、音声入力で次々に入力していけばよいでしょう。
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序章で、「話そうとしても何も思い浮かばない場合がある」と言いました。このとき、頭の中は空っぽになっているのではありません。あまりに多くのことを考えているために、考えが集中していないのです。
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では、集中するにはどうしたらよいでしょうか? きわめて有効な方法は、メモを「見る」ことです。それによって、考えが、その案件に固定されます。
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メモを書く理由は、「備忘」ということだけではなく、「集中の支援」ということもあるのです。
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しかし、それにただ従うというよりは、むしろ、「アドバイスに触発されて、あなた自身が新しい解決策を思いつく」という場合のほうが多いのではないでしょうか?
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ですから、発想のためには、あるテーマに頭の活動を固定化する必要があるのです
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文字は、もちろん他人とのコミュニケーション手段として重要なのですが、自分自身とのコミュニケーションでも重要な役割を果たすのです
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序章で述べたとおり実際に話してみると、内容があまりないということが分かって、愕然とすることもあります。音声機能が入力受け付け状態になっているにもかかわらず、「あー」とか「うー」と言うだけで、意味のある言葉が出てこないのです。これでは、音声入力機能でいくら文章を速く書けるといっても、何の価値もありません
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まずは、文章化することによって、あなたがその問題についてどの程度の分量の考えを持っているかを把握しましょう。5分間話せる内容を持っているのか、あるいは求められれば1時間でも話せるのか。それとも、1分も話せないのか? それを把握しておくのは大変重要なことです
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文字にしてみれば、他人のものとして見ることができます。自分の頭の中を、あたかも他人が見るように覗くことができるのです。これは、自分自身との対話です。それによって、自分の考えの問題点を知ることができます
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キーボードで入力をする場合には、それまで入力した文章を見て、論理展開を頭で考えながら文章を打ちます
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このため、講演の際に、私は全体の構造を示すレジメを必ず配ることにしています
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日本の講演の大部分は一方通行で質疑の時間はないのですが、英語の場合には最初のプレゼンテーションは半分程度であり、残り半分程度が質疑になるのが普通で
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明日プレゼンテーションがあるなら、音声入力でメモを作ろ
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こうした場合、「考えはすべて頭の中にあるから大丈夫」などと考えず、スマートフォンに向かって話しかけて、考えを文字化すべきです
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さらに、考えていることを順番に話してみましょう
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5分でも10分でも良いから、あることをスマートフォンに向かって話し、その内容を見て、どこが足りないかを考えるのです
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処理した後のGoogleドキュメントのメモは、削除してしまうのがよいでしょう
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ところが、これは、NHKのアナウンサーのスピードで話し続けた場合の約5分の1の分量でしかありません。 音声入力が途中で中断することの影響もありますが、考えながら話しているので、原稿を読み上げるように淀みなく話し続けられないことが、一番大きな理由です
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文章を書くために最も重要なのは、「とにかく書き始める」ことです
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「どうしても言いたいことがあるかどうかを、まず確かめるべきだ
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文章を書く作業で最も難しいのは、文章の最小単位を適切に結合し、全体として説得力のある論述に仕上げてゆくことです
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頭の中にあったあまり整理されていないさまざまな考えを、そのまま並べていくだけでは、まとまった主張になりません。自分が最も主張したいのはどれかをはっきりさせ、不要なものは捨てる。そして、主要な論点を補強するための材料を揃えることが必要です
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どのデータをどのように分析するかを指示する必要があります。ところが、それは実際にやってみないと分かりません。つまりデータ分析とは、自分自身で試行錯誤しながらでしか、進めることができない作業なのです
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ところが、クリストファー・スタイナー『アルゴリズムが世界を支配する』(角川EPUB選書)によると、音楽の分野では、人間の作品と区別がつかないような作品をすでにコンピュータが作るまでになっています
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セマンティック検索の目的は、文字列(strings)ではなく、モノゴト(entity)を探し当てることだとされます
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つまり、「月といっても、moonと、月がついた名前はまったく別のものである」ということを、コンピュータが認識しているのです。これは考えてみれば驚くべきことです。Googleのコンピュータは、世界を構成する概念を理解しつつあるということになり
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異なる言葉であっても同じ意味を持つ場合、それらを同じと解釈する」ことが強調される場合が多いように思われます。 確かにそれは重要なことです。しかし、これはシソーラス(類義語辞典)を持っていれば、かなりの程度は解決できる問題です
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知りたいことがあったらすぐに話して検索する」習慣をつけることです
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重要なのは、このような技術がすでに利用可能になっていることを知り、それを応用するために仕事の仕組みを変えていくことです。これが、本書で強調してきたことです
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補助的な仕事、つまり創造を行なわない単なる中間的な仕事では、人間が排除されていくでしょう。付加価値を加えることなく、情報伝達の仲介しか行なっていなかった人々は、不要になるでしょう
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私は仮に翻訳機能がいま以上に発達して実用段階に達したとしても、なお外国語の勉強が必要だと考えています
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ゲーテの『ファウスト』は、ドイツ語でしか成り立たない作品です。ドイツ語と比較的近い言語である英語に翻訳しただけでも、その価値は大きく損なわれます
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知識の教育は今後も必要不可欠だと考えます。なぜなら、知識がないところに創造活動があるはずはないからで
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このままでは、日本のすべての経済活動が、Googleの支配下に入ってしまうと危惧する声もあります。優秀な大学院生が、日本企業に入ると力を発揮できないため、外資系企業に入ろうとする傾向があるとの警告もあります
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手書き文字の認識。多くの人は、これに期待しています。しかし、これもあまり意味がありません。なぜなら「書く」ことは、それほど簡単ではないからです。キーボードを打つほうが早く、疲れも少ない。より効率的な手段が利用できるのですから、非効率な手段である手書きを利用する必要はありません。手書き文字は、写真に撮ってアナログ情報として保存しておけばよいでしょう
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音声入力の進歩に、問題がないわけではありません。最も大きな問題は、この技術を提供できるのが、ごく一部の企業に限られてしまうことです
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こうした状況に対して、日本は一体どのように対応できるのでしょうか? われわれは、それを真剣に考える必要があります
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マル カイギョウ」と言えば、句点を打って改行します(逆に言うと、「改行」という言葉を文字としては表示してくれないわけです)。また、( )「 」なども音声で入力できます(それぞれ、カッコ、カッコトジ、カギカッコ、カギカッコトジ)。中丸、アスタリスク、星印も変換します
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