@kyanny's blog

My thoughts, my life. Views/opinions are my own.

なるほどデザイン

本屋やAmazonで何度か見かけて気になってた本。電子書籍でも買えるけど、なんとなくパラパラめくって見るのがよさそうだと思って紙の本を買った。

パラパラめくって眺めただけだけど、面白かったし、ためになった。構図の決め方、強調の仕方、余白の使い方、グラフやチャートの選び方など、なるほどそうやって考えてるのか、と思った。

自分はグラフィックデザインはしないけど、プレゼン資料を作るときや技術文書に添付する図版を作るときになかなか思うようなものができず苦労するので、次にやるときはこういう原則を意識して取り組みたい。

なるほどデザイン〈目で見て楽しむ新しいデザインの本。〉

なるほどデザイン〈目で見て楽しむ新しいデザインの本。〉

イシューからはじめよ

ものすごく良かった。とても面白かった。もっと早く読むべきだった。

「答えを出すだけの価値がある問題を見極める」「取り組むべき問題を絞り込んでから解き始める」これが大事なんだ、という論点をいきなり冒頭で述べている。言われてみれば(言われてからなら)その通りだと思えるが、初めて読んだときはけっこうな衝撃を覚えた。自分がこれまでいかに無駄なことをしてきたか気付かされた。

本書では「イシューの見極め」「大胆な仮説」「仮説に基づくストーリー」「仮説を検証する分析」「明快な結論」という順序で物事を進めていくのだ、と説明されている。その各項目の説明の仕方それ自体が、著者の提唱する「イシュードリブン」の考え方に基いて構成されている。つまりこの本は、本を読み進めるにつれて「考え方」そのものが例を変えながら繰り返しでてくるので、読めば読むほど考え方への理解が深まる、というつくりになっている。これに気づいたときはいわゆる「アハ体験」だった。

構成が秀逸だからなのか、内容そのものは小難しいところが一切なく、むしろ非常にとっつきやすい。随所にでてくる問題解決の例題はどれも身近で興味をそそられるもので、自分でも例示されている考え方をトレースしながら考える練習もできるようになっている。「お勉強」という感じのところがない。

他分野におけるフレームワークやプラクティスと通じるところもありそうだ。自分で気づいたところでいうと、ちょうど読み終わったばかりの XP に似ていると思ったのが、「いきなり問題を解き始めずイシューの見極めから行うのと、いきなりコードを書き始めず先にテストを書くのは似ている」というところと「ストーリーラインは決め打ちではなく都度書き換えて磨いていくのは、ウォーターフォール開発と違い小さい開発サイクルを素早く回してこまめにフィードバックを得て、それをもとに見積もりの精度を上げていく XP と似ている」というところ。

イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」

イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」

Quipper に入社してもうすぐ三年になるが、この三年間で自分なりに「何が問題なのか?今本当にやらなければいけないことは何か?妥当な品質を維持しながら最も低いコストで実現するためにはどうすればよいか?」のような思考を身につけてきたつもりだ。外資系・グローバル企業だからなのか、 CEO がマッキンゼー出身だからなのか、事業への選択と集中が普通の会社とは桁違いなスタートアップという環境だからなのか、合理的な判断をする CTO のもとで働いてきたからなのか、いろいろ要因は考えられるが、問題解決の仕方が磨かれるような環境に身を置けたおかげで少しは成長できたと思っている。

しかし、もしこの本を五年前に読んでいたら、転職前からもっと良い仕事をし、もっとインパクトのある結果を出し、もっと事業に貢献できたかもしれない。少なくとも自分の仕事への取り組み方は改善できたはずだ。そう思うとくやしい。

エクストリームプログラミング

ペアプログラミング」を読んだ流れで読み始めた。「古典をたしなむのも悪くなかろう」という気持ちで読み始めたが、古典どころか現在進行形の内容ばかりだった。

いきなり具体的な話からはじまり、思想的な話は後ろの方でやっとでてくる構成は意外だった。

実践のための本なのだから実践的な、行動に繋がる内容に重きをおくのは当然だしそれを先に持ってくるのには好感を持ったが、思想的背景抜きにいきなりプラクティスやプリンシプルを延々と紹介されると説教くさく感じてしまい、途中で一度投げ出しそうになった。

しかし後半に入るにつれて面白くなっていって、「なぜ私は XP をやるのか」という個人的な動機などの話に至りすべてが繋がる、というまるで映画を観たような読後感だった。

XP についてなんとなく知っているつもりになっていただけだったので、いろいろ気づきもあった。最も印象に残ったのは、「XP は TDD を必須とはしていない」ということ。他にも、 XP の「文脈」で語られる手法を、その成り立ちから正確に把握できていなかったものがたくさんあるのだなと内省するきっかけになった。

全体も各章も短めで、かつて悪名高かった訳もその片鱗すら感じさせないほど読みやすく、さらっと読めた。しかしこの本はさらっと読んで済ますわけにはいかなそうな、何度か読み返すことになりそうな、そんな気がしている。

エクストリームプログラミング

エクストリームプログラミング

NewsPicks は往年のはてなブックマークに似ている

はてなブックマークの「コメントで議論してブックマークページが盛り上がる」というメタな行為を「神の視点」と見事に形容した人がいるが、 NewsPicks のコメント欄を見るたびに全く同じことを考える。

方や多彩なジャンルのニュース・ブログ・まとめなどバラエティに富むコンテンツとそれへの反応を扱う総合メディア媒体、方や硬派な経済ニュース専門のメディア媒体と、一見すると扱うコンテンツや方向性が全くの別物のように思えるが、どちらもコアユーザーを惹きつけるキモは「コメント欄」にあると思う。

はてブでは「うまい」コメントにはスターという形でフィードバックがつくが、かつては「名物コメンテーター」といっていい、はてブコミュニティ内での有名人が何人もいて、そういう人のコメントはなんであれ注目を集めたものだった(最近はどうなのか、みていないので知らない) NewsPicks においては業界の著名人がそれに相当するだろう。

はてブというコミュニティが盛り上がったのは、単に有名人のコメントが読めてスターをつけられるからではない。有名人のコメントと名も無き誰かのコメントが全く同等に陳列され評価を下されるフラットさ、そしてそのやり取りそのものが、話題の元となっている「ブックマークされたページ」の当事者不在で自由に行われるところにあった。そこにコメントを書き込めばたちどころに、あの有名人たちと同じステージにあがって脚光を浴びる可能性がうまれるのだ。いや実際には脚光を浴びることなんてそうそうないけれど、それでも「自分も同じ土俵にあがっている」という充足感は得られる。

NewsPicks も同じ構造を持っているから、「有名人の価値あるコメント」と「その周囲に群がる一般人のどうでもいいコメント」が織りなす世界はユーザーに同じような体験をもたらすと思われるが、有名人が実際に現実社会で有名なので「同じ土俵で意見している自分」に感じる充足感は数倍にものぼるだろう。それはつまり、中毒性がはてブの比じゃなく強いということだ。

かつて、はてブに書いたコメントへの反応が気になって仕事中もずっとはてブをみていた経験がある身として、 NewsPicks というコミュニティには非常に警戒心を抱いている。ただでさえ真面目な内容に対して、大の大人が真面目なコメントを(文字数制限なく)書いていて、しかも注目されている有名人の注目されているコメントがそこかしこにある。そんなもの、読み始めてしまったらやめられるはずがない。その上、もし自分がコメントを書いてしまったら、そして反応がついてしまったら。ポジティブな反応に舞い上がり、ネガティブな反応に怒り狂う自分の姿が目に浮かぶ。有名人からレスなどつこうものなら狂喜乱舞してしまうだろう。 NewsPicks でうまいコメントを書いて認知されることだけが楽しみで、寝ても覚めても NewsPicks のコメント欄ばかりみている NewsPicks 廃人と化してしまうだろう。

そんな危険なサービスの利用は即刻やめるべきであるし、そう思ってスマートフォンからアプリも削除して必要なときだけインストールしたりしていたのに、あろうことか今日ついに有料サービスの契約をしてしまった。これでは地獄の一丁目に片足を踏み出したも同然だ。 LINE とライブドアの特集をやっているオリジナル記事が有料会員限定配信だったので、読みたい誘惑に勝てず課金してしまった。コメント欄に目がいかないように気をつけながらとりあえず読みたい記事は読み終わったが、いまにもコメント欄を読み始めてしまいそうで、「元社員ですが」とか手っ取り早くそこそこの注目をえられそうな書き出しでコメントを書いてしまいそうで、困っている。