@kyanny's blog

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MAD美味しんぼ 3題

2005年9月16日
  • 激突! 放射能料理対決
  • 究極の化学調味料
  • 焼きそばパンを守れ!

激突! 放射能料理対決

団社長: で、今度の「究極」対「至高」の対決は、放射能を使った料理、ということで進めたいのですが。

大原社主: しかし放射性物質なんて料理に使えるのかね。体に害があるんじゃないの。

団社長: 常識で考えればそうなのですが、実は「放射能を使った料理」を題材にしたいとおっしゃっているのは海原先生なんです。

山岡: 何、雄山が?

団社長: はい。「伝統を墨守するだけが料理ではない。放射能と言えば悪、原子力と言えば危険、とばかの一つ覚えのように考える衆愚の蒙を啓くという点でも意義深いことだ」と…

富井副部長: 対決を断れば我々は衆愚ということか…

山岡: いいですよ。そんな挑発に乗るわけではないけど、向こうがそれでやりたいというなら、ミシンでもこうもり傘でも。

ゆう子: 放射能を使ったお料理なんて、本当にできるのかしら。

山岡: そうだなあ。プルトニウム。劣化ウラン。…煮ても焼いても食えないものばかりだ。

二木まり子: 山岡さん、栗田さん、こんにちは。いいものを持ってきてあげたわ。バヌアツみやげ、ストロボの柄よ。

ゆう子: ストロボの柄…?

二木まり子: バヌアツの海には素晴らしい珊瑚礁があるのよ。新聞社の方にはお気に召すと思って。だってK・Yって「栗田ゆう子」のイニシャルでしょ? カメラマンの彼氏によろしくね。

ゆう子: 何のことやらさっぱり…

荒川: それにしても二木さん、日に焼けたわねえ。

二木まり子: それはもう、今年は夏中、南太平洋の島でのんびり過ごしていたから。ちょっと焼き過ぎちゃって体中、痛いわ。お金がありすぎて、つい海外で優雅なバカンスを過ごすのも考え物ね。おほほ。

山岡: そうか、その手があったか! 日焼けだよ、日焼け。

ゆう子: どうしたの山岡さん。

山岡: 今度の「至高」との対決の鍵となるのは、日焼けだったんだ。

三河編集長: 今回のテーマは「放射能料理」です。それでは「究極」の側からお願いします。

京極: はて。ただのアジの開きの焼いたのにしか見えないが…

唐山陶人: 放射能で突然変異した魚なのかな。あんまり食べたくないなあ。

山岡: 大丈夫。ほら、ガイガーカウンターを近づけても、何ともないでしょ。

京極: それじゃまあ一口…

唐山陶人: こ、これは…!

京極: ただのアジの開きどころではない。この豊穣さ。

唐山陶人: 魚のうまさを繊細なメロディーにたとえるなら、このアジのうまさはポリフォニー、それも四声部、五声部の旋律がからみあった複雑な音楽だ。めちゃくちゃうまいぞ。

秀沢局長: 信じられない…。いくつもの味の成分が絡まり合って複雑で重厚だが、それでいて軽妙で典雅。まさに、音楽でたとえるなら、バッハのフーガの技法、パッヘルベルの三重カノン、ラベルのパバーヌを合わせたようなすごさ。いったいどんな調理法を使ったんだ。

山岡: 電磁波は料理と深い関係にあります。炭火で焼いた焼き肉がうまいのは遠赤外線の作用だし、天日で干した干物のうまみは紫外線によるアミノ酸の分解による。またこれは調理のあるべき姿とは言えないが、電子レンジはマイクロ波を利用している。

山岡: しかし天日で干す場合、時間をかければかけるほど味は熟成するが、同時に、強烈な陽射しのせいで蒸れたり腐ったりする危険も増す。本来は時間をかけたいが、かけ過ぎることができない。もっと短時間で、長時間天日で干したのと同様の効果を出すことができれば、このジレンマは解決する。ガンマ線の照射がその答えです。このアジは開きにしたあと、天日で干す代わりに強力なガンマ線を照射したもの。放射線の平和利用がいかに素晴らしいか示すため、あえて、それ以外には手を加えず、単純に焼いただけ。一般の家庭で作るには、蛍光灯に付属しているグローランプを30万個ほど並べれば手軽に代用できます。

富井副部長: そうか、放射線は一瞬でも、長時間夏の直射日光を浴びた場合の日焼け以上のケロイドを生じさせる。兵器に使えば物騒な話だが、このように料理に平和利用すると…。しかし、うまい。これはうまいですぞ。ほっぺが落ちそうだ。

三河編集長: 「究極」の側の放射能利用調理法はなかなか好評のようです。それでは次に「至高」の側の料理をお願いします。

唐山陶人: これは…刺身かな。

京極: タイの頬肉や。

唐山陶人: うわはぁ、何というこなれた味…!

山岡: !!!

海原雄山: さよう、マダイの頬肉。そのまま普通に調理しても絶品だが、それを内部被ばくさせてあります。

京極: 被ばくした魚…!

海原雄山: ご心配なく。被ばくさせたのは捕獲直後。半減期は38分。つまり今こうしてお出しする時点では、放射能は事実上ゼロです。その代わり、半減期の短い同位体をいかに海水に組み込むかでは大変な苦労をしました。

唐山陶人: 海水に組み込む?

海原雄山: まず世界で最も汚染がないトンガの海水を採取しました。次にこれを実験室内で徐々に加熱、凝固点の違いを利用して、塩化ナトリウムのみを分離する。同時に塩素の放射性同位元素である塩素38を使って特殊な方法で合成した放射性の塩化ナトリウムを、分離した塩化ナトリウムと同量、加える。この作業によって、トンガの海水が塩化ナトリウムの塩素部分のみ放射性に置き換わった放射性の海水となるわけです。半減期が38分であるから調理は手際よく行わなければならない。極上のマダイを生きたまま、常温に戻したこの放射性海水の中に放り込む。ここからは「究極」側の担当者の説明とも一部重なるが、放射線は紫外線と同様の効果を及ぼし、腐敗なき熟成が行われる。しかし単なる外部照射と違い、線源は海水そのものなので、タイの体内にも浸透し、隅々まで均等に効果が及ぶ。しかも半減期が短いので翌日には放射能が抜け、安全に食べることができる。その結果は…言葉で説明するより味わっていただくのが早いというもの。

唐山陶人: うむ、人類未到の領域を感じさせるわい。「究極」側のアジの干物風も素晴らしかったが、それはアジの干物の延長線上を出ない。日光の代わりに放射線を照射しただけ。それに対して「至高」のタイは調理法そのものが新しい。

大原社主: ……。

小泉編集局長: ……。

三河編集長: えー、審査の結果を発表します。「究極」の放射能料理は大変素晴らしいものでしたが、海水の塩素をアイソトープに置き換え内部被ばくさせるという「至高」の技法と比較した場合、単に放射線を浴びせただけの調理法は幼稚と言わざるを得ません。料理そのものについても、放射線を外部照射した「究極」の料理は、魚の表面と内部で熟成の度合いが異なるため、完全にこなれた味となっていません。調理法の素晴らしさ、結果の素晴らしさのいずれにおいても「至高」の側の勝ちと判断します。

海原雄山: フフッ、士郎。おまえは放射線と言えば外部から被ばくするものとの固定観念にとらわれ、内部被ばくにまで考えが及ばなかった。電子レンジが調理のあるべき姿でないと言いつつ、おまえは放射線を単に照射しただけで満足し、それより先を考えようとしなかった。放射線を浴びせることで熟成させるというのは放射能料理の入口に過ぎないのだ。単に浴びせましたというだけで「究極」とはかたはらいたい!

山岡: うぐっ…

富井副部長: 山岡のやつ、呆然としているようだな。

谷村部長: 山岡くん、まあ、そう気を落とさずに。

山岡: いや、ちょっと考え事をしていただけです。雄山の調理法はまだ改良の余地があるのではないかと…

谷村部長: 本当かね?

山岡: 雄山は塩素だけ放射性にしたけど、金を惜しまないなら、水自体をトリチウムの重水にして、そこに魚を漬け込めば熟成効果が上がるはず…

谷村部長: 無理じゃないかな。同じ放射性物質でも、トリチウムは半減期が10年以上だからね…。

山岡: そうか、その問題があったか…。放射能料理は奥が深いな。

ゆう子: でもトリチウムは核融合発電の鍵。クリーンな原子力発電への道を開いてくれる存在。放射性物質には医療・文化財調査・学術など、たくさんの平和利用の分野があるのね。放射能がお料理にも役立つことが分かっただけでも、今回は収穫だったんじゃないかしら…

究極の化学調味料

荒川: とは言っても、事実上、日本の国民食よね。

三谷: そうそう、何にでもお醤油かけるみたいに、何にでも入れちゃう。

ゆう子: 三谷さんは、特にお醤油が好きよねぇ…!

谷村部長: 何の話かね。

山岡: ばかばかしい話です。化学調味料が日本の国民食だなんて。日本の恥部ですよ。

谷村部長: ほお、化学調味料か。確かにその問題は一度、研究してみる必要があるんじゃないかな。

山岡: 研究するまでもない。あんなものは使ってはいけない。それだけです。

荒川: 先入観と偏見じゃないの、それ。隠し味に微量に使うくらいありだと思うけど。

谷村部長: うむ、否定するにせよ、十分に研究もせずに結論を出すのは良くないよ。

山岡: ちぇっ、デパートの食品売り場に取材に行ってこいだなんてさ。化学調味料なんて見るのもいやだよ。

ゆう子: こうしてよくよく見ると、いろんな種類があるのね…。

山岡: サイズがいろいろあるだけだよ。中身は全部同じ、グルタミン酸ナトリウムとイノ…

ゆう子: あら、海原先生!

海原雄山: む、おまえたち、こんなところで何をやっているんだ。究極の料理とやらの材料探しか。

ゆう子: よくお会いしますね。

海原雄山: ストーリー展開の都合だ。そんなことより、何だ、おまえたちは、化学調味料を買いに来たのか。情けないにもほどがある。やんぬるかな。「究極の料理」、地に落ちたり。

山岡: そんなふうに化学調味料のことをあしざまに言うからには、それなりの研究と論拠があるのだろうな。

海原雄山: ばかも休み休み言え。化学調味料のどこに研究の余地があるというんだ。すべて画一、同じ味。研究するまでもないこと。

山岡: 十分な研究もせず頭から駄目だと決めつける。無知と偏見の固まりだな…。

海原雄山: ではおまえは、化学調味料を使ったうまい料理を知っているとでも言うのか。付き合いきれん。中川、行くぞ。

山岡: 敵前逃亡しようというのか。

海原雄山: 敵前? 逃亡? ふっ… 何が望みだ。

山岡: 今度の「究極」対「至高」の対決、化学調味料を題材にしたい。究極の化学調味料を味わわせてやるよ。

海原雄山: ……。

ゆう子: 山岡さん、いくらなんでも、それは…

海原雄山: 良かろう。それでは、わたしも至高の化学調味料の使い方を見せてやろう。

ゆう子(独白): 山岡さんたら… 化学調味料をあれほど否定してのに、海原雄山への敵愾心から今度はムキになって擁護するなんて…

三河編集長: えー、今回は「化学調味料」を題材に料理していただきます。では「至高」の側からお願いします。

海原雄山: まず、この汁物を味わっていただこう。

唐山陶人: む…

京極: これは…

海原雄山: お気に召さなかったようですな。今のは前座。それでは至高の化学調味料料理をお出しします。

大原社主: はて、また同じ汁物が。

山岡: …そういうことか。

海原雄山: 最初にお出ししたのと、次にお出ししたのは、まったく同じ汁物。ただし、最初の方には微量の化学調味料が加えてある。お分かりのように、化学調味料は完成された繊細な味わいを破壊するものでしかない。「至高」の化学調味料の使い方、それは使わないことです。

小泉局長: しかし化学調味料を題材とした勝負で化学調味料を使わないというのは、規定違反なのではありませんか。

海原雄山: 審査の先生方がそう判断なさるなら、失格でも結構。「至高」の化学調味料の使い方、それは使わないこと。それがわたしの解答だ。

三河編集長: では「究極」の料理をお願いします。

嶺山社長: 「究極」の側も汁物だ。

唐山陶人: あれれ。ははあ。なんだ、士郎も同じ答えを出したのか。この自然で癖のない味。「究極」の出した答えも化学調味料は使わない、ということだったとは。やはり親子だな。

富井副部長: でも山岡の汁物の方がおいしいよ。

唐山陶人: だしの取り方が良かったんじゃろう。だが今回は汁物対決ではないし、両者が出した答えが同じなら、引き分けということか。

ゆう子: 待ってください。「究極」の汁物は化学合成された調味料で味つけしたものです。

秀沢局長: それこそ反則だ! 天然のいい材料をふんだんに使って、これは化学調味料だと言い張る。規定違反です。

山岡: 説明しましょう。そもそも化学調味料は化学の知見と技術によって合成された調味料のことであって、何もグルタミン酸ナトリウムに限らない。限る必要もない。

ゆう子: わたしたちは、まず信頼のおける一流の調理人、30人に麩だけの吸い物を作ってもらい、それを化学分析し、検出されたすべてのアミノ酸について、別の経路から抽出したものを化学的に再合成したのです。まさに「究極の化学調味料」です。

海原雄山: 何と…。

山岡: それだけではありません。カリウム、マグネシウム、銅、亜鉛、モリブデンなどの微量要素についても、さまざまなパラメータで同じ30人にダブルブラインド・テストを行い、最もおいしく感じられる配合を決定した。驚いたことに、ダブルブラインド・テストの結果は、この調理人たちが自分で最高と考えている配合とは有意に異なった。つまり、われわれの化学調味料は単なる「本物の味」の再合成ではなく、そこから一歩進んでいる。数学的・統計的に根拠ある事実を用いて、化学的な合成を行った。その素材は、主に無機塩の形で海水から抽出したものです。

嶺山社長: そ、それじゃやはり規定違反じゃないか! 海水という自然素材を加工しているのなら、化学調味料とは言えない。

ゆう子: いわゆる「化学調味料」も、サトウキビから抽出したものです!

嶺山社長: ……。

三河編集長: 審査の結果を発表します。「至高」の側はたとえ失格と判定されようとも化学調味料は使わないのが最善である、という主張を貫きました。協議の結果、この点については失格とせず、一つの見識と認めることにします。しかし、「究極」の側の汁物の味は「至高」をしのいでいる。しかもその調理法は、まさに「究極の化学調味料」と言うべきもの。今回は「究極」の側の勝ちとします。

焼きそばパンを守れ! (きんぎょ注意報!)

中学生A: 山岡さん、助けてください!

中学生B: 焼きそばパンが、焼きそばパンが危険なんです! 助けてください!

山岡: こ、困っているのは分かったからさ。何がどう危険なのか、順序立てて説明してくれないかな。

ゆう子: なるほど、A子さんたちの学校の理事長が、購買の焼きそばパンを発売中止にしようとしているわけね。

山岡: 「焼きそばパンは下品な食べ物で校風に合わない」…か。でもその理事長の言うことにも一理あるよな。焼きそばパンなんて、あんまり品のいい食べ物じゃない。食べ物自体もそうだけど、手巻き寿司と同じでさ、口で食いちぎる食べ方がちょっと…

ゆう子: 「クロワッサン・サンドは品がいい」…そう言われれば確かに…

山岡: いや、それもどうかな。北米のバーガーキングには「クロワッサンド」という朝食メニューがあるけれど、脂っこくてあまり感心しない代物だったよ。

中学生A: そうですよ、そうですよ! 理事長ご推薦のクロワッサン・サンドに負けない究極の焼きそばパンを作ってください!

中学生B: クロワッサンなら上品だ、なんて西洋かぶれのブランド品志向と同じです。焼きそばパンこそ日本人の心のふるさとっ! よくぞ日本人に生まれけり、という料理なのですっ!

中学生A: 焼きそばパンを守れ! クロワッサンを追放せよ!

中学生B: 尊皇攘夷! 尊皇攘夷!

山岡: たはっ…

山岡: そりゃパンはさ、国産の良質な小麦粉を使って、イーストフードなど使わずまじめに作ればおいしく作れるよ。天然の酵母を使って。焼きそばだって、良い野菜を使ってきちんと作って、できたての熱々のを食べれば、おいしい。だけど、焼きそばパンとなるとなあ。その場で調理するのでもない限り、中の焼きそばは冷めてしまう。冷めた焼きそばなんておいしいはずがない。あんパンとはわけが違うんだ。

ゆう子: でもカレーパンはどう? カレーだって、一見、できたてがおいしくて、時間がたって冷めたらおいしくないはずだけど、カレーパンのカレーは冷めているわ。

山岡: そうか。カレーパン方式があったか。閉じ込めてしまえば酸化しにくく、風味の劣化を防げるぞ。

中学生A: 閉じ込めちゃだめよ。

中学生B: そうそう、焼きそばの上に紅ショウガが乗ってるところが、かわいいんだから!

中学生A: なんか山岡さんて、頼りなくなくない?

中学生B: 海原雄山に頼もうか…

山岡: 雄山がそんな頼みを聞くもんか。冷めてもおいしい焼きそばパンを作れ、だなんて。

海原雄山: 話は聞かせてもらった。

山岡: ど、どこからわいて出たんだ。

海原雄山: 燕雀いずくんぞ鴻鵠の志を知らんや。小人は細かいことにこだわり、本質を見ない。

山岡: おまえは、冷めてもおいしい焼きそばパンを作れるというのか。

海原雄山: やはりな。

山岡: 何がやはりなんだ。

海原雄山: 言葉で説明しても無駄だろう。今からその理事長のところに案内してもらう。本質とは何か知りたければ、おまえも来るがいい。

千歳: 美食家として名高い海原雄山先生にお越しいただくなんて、光栄の至りです! わたくしが理事長の、藤ノ宮千歳です。

海原雄山: この学校の購買には、都会ノ学園にはない焼きそばパンがあるそうですな。

千歳: いえ、その、ぁ…あのようなものは禁――

海原雄山: さすがは新田舎ノ中学。

千歳: えっ…?

海原雄山: 都会ノ学園は何でも西洋風にすれば高級だと思いこんでいる。実に情けないことだ。自国の文化さえ尊重できずに、他国の文化を尊重できるわけがない。クロワッサンならおしゃれだなどと、凡人の考えそうなこと。焼きそばパンは日本が世界に誇る食べ物です。

千歳: も、もちろんですわ…。らんま1/2にも登場しますもの。おほほほほ。

海原雄山: 都会ノ学園の生徒会長は、バレンタインのときも、ベルギーのチョコレートを取り寄せて独り悦に入っていましたな。一方、あなたはバレンタインなどくだらないという態度だった。

千歳: よくご存じで…。

海原雄山: ええ、かないみかと、こおろぎさとみの区別がつかない者は、美食倶楽部には入会できない。ともあれ、一言賛辞をお伝えしたかったのです。それではこれで失礼します。

中学生A: 海原先生、ありがとうございました。理事長は禁止を撤回してくれました。

中学生B: それどころか、焼きそばパンを奨励することになったんですっ!

海原雄山: 士郎、分かったか。彼女たちの願いは「おいしい焼きそばパンが食べたい」ではなく「焼きそばパンが購買からなくならないようにしてほしい」だった。理事長の考えは「焼きそばパンはまずい」ではなく「世間体が悪い」、要は「認められたい」「高く評価されたい」ということに過ぎない。おまえはまたしても「天然酵母」だの「閉じ込めればいい」だの、材料自慢、腕自慢に走り、相手が真に何を望んでいるのか、人の心が見抜けなかったのだ。料理の基本はもてなすこと、人の心を楽しませること。基本すら分からぬおまえに、果たして究極の料理が作れるのかな…