@kyanny's blog

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星と闇と暗い星

photo by Wendy Longo photography

星を観にいく - steps to phantasien を読んだ。

自分もそれなりに星を見てきて、輝く星になることをまだ諦められてもいないので(刺身☆ブーメランだけにね)、この話は身につまされた。

暗い星の話といえば、戸田誠二の「スター!」(美咲ヶ丘ite一巻収録)だ。

美咲ヶ丘ite 1 (1) (IKKI COMICS)

美咲ヶ丘ite 1 (1) (IKKI COMICS)

田舎の一番星だったクミは歌手になるため上京するが、なかなか芽が出ない。自信を失いかけていたときに憧れていたプロの歌を聴き、あまりの差に打ちのめされる。意気消沈し帰省した田舎の夜空を見上げ、つぶやく。

「小さい星じゃ、東京では見えないよ。
 強く大きく輝く星じゃないと…」

クミはそこそこ歌が上手いだけに、本物のスターと自分の実力差を正確に測れてしまい、激しく落ち込む。暗くても星は星、だからこそ圧倒的な違いを見せつけられたときのショックは大きい。

この話は暗い星がまた輝き始めた兆しとともに幕を閉じるが、戸田は輝くことをやめた星の話も描いている。戸田が挫折を描いた話はいくつかあるが、なかでも「覚醒機」(スキエンティア収録)を挙げたい。

スキエンティア (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

スキエンティア (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

プロを目指すミュージシャンの相澤は、知人の田島から、寿命を縮めるかわりに脳を活性化させる装置を試さないかと誘われるが思いとどまる。装置による覚醒の賜物で大ブレイクした田島を尻目に相澤は地道にオーディションを受け続けるが、ついにプロを諦める。

「…ハッキリ言って8年やってこれならやめた方がいいと思いますよ。
 それでも あきらめない人はあきらめない。」

審査員の容赦ない言葉が、漫画を読んでいるだけの自分にも突き刺さる。そう、どんなに打ちのめされてもあきらめない人はいるのだ。一番怖いのは自分の輝きが弱いことでも、それを認めることでもない。輝度なんてお構いなしに光り続ける覚悟が、自分には無いのだと知ることこそ恐怖だ。

闇があるからこそ光は際立つ。暗い星も彼方から見れば闇と同じようなもので、だからちゃんと存在意義がある—そんな風に納得できる日がいつか来るのだろうか。それともいつか自分も強く輝く星になれるのだろうか。これまでの10年で、まだどちらの答えも出ていない。もうあと10年、答えを探してみるのも悪くないかな、と思う。