「同志少女」の逢坂冬馬の新作。三作目にあたる。面白かった。一気に読んだ。
二作目の「歌われなかった海賊へ」は、ジュブナイルっぽさが強すぎて途中で読む手が止まってしまった。そういう方向の作家性ということなのかなあ、と不安混じりで手に取った「ブレイクショット」は前作とはがらりと違った雰囲気で、不安は払拭された。
ばらばらの群像劇のようにみえて、各章はちゃんと繋がりがあるのだけど、序盤は読んでいてもそのことがよくわからない。しかし、全体像が掴みきれない序盤は文章力で読み切らせ、短編集のつもりでサクサク読み進めるにつれて構成力を見せつけられる、という感じ。
作者初の現代を舞台とする小説だからなのか、ちょっと色々な要素を詰め込みすぎた感はあるが、きっちりまとめていて消化不良はまぬがれている。社会派な内容であり、やるせないエピソードも語られるが、全体のトーンは軽快で前向きなので読後感は悪くない。終盤の展開はご都合主義かなあと思わなくもないが、まあフィクションだし、暗い結末は作風に似合わないよな、とも。
やはり逢坂冬馬は間違いない。これまでは一年半から二年ごとのペースで新作を発表しているので、次作は早くて来年末か。どんなものを読ませてくれるのか、今から待ち遠しい。