@kyanny's blog

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「サマーウォーズ」をみた k

期待したほど面白くなかった。「時をかける少女」のほうが断然良かった。

以下ネタバレあり。

OZのCGは悪くなかった。けど、OZを取り巻く現実世界がOZと不釣り合いでリアリティが感じられなかった。顕著なのがキングカズマで、あれだけ自由度の高い格闘ゲームをバーチャル空間で遊ぶならヒューマンインターフェースがキーボードってのはありえない。2009年ですらゲームパッドくらい繋ぐだろうし、OZがつくれるくらいの技術力があれば加速度センサつきのグローブやらシューズやらでモーションキャプチャしたり、カメラで光学的に人体の動作を解析するだとか空間の密度変化とかを読み取るとか、いくらでも「ありそう」と思わせるやり方があったはず。なのにキーボードをカチャカチャ叩かせてしまうのは、スタッフがそういう分野に疎くてろくに調べてもいない、つまりあんまり細部にこだわって作ってない映画なんだなーという姿勢を現しているようにみえて、かなり興ざめしてしまった。

大家族が世界を救うために立ち上がるまでの一連の流れにどうにも感情移入できなかった。動機が弱すぎるっていうか、ちょっとヤンママ風?なオバサンが主人公に「あんたひとんちで何いってんのよ」と言い放つシーンがあるが、そう思うのが普通の反応だと思う。システム障害でアラートメールがこなかったせいでばあさん死にました、なんて、むしろ今までよく長生きしたよねーって感じだろう。

OZの暗号システムについても大いに疑問を感じる。数学オリンピック日本代表に惜しくもなり損ねた高校生が、一晩かけて(ほぼ)解読できてしまう程度のアルゴリズムを採用しているシステムが、人工衛星でコロニー落としできたり交通や水道を操作できたりするシステムの上位にあるってちょっと考えられない。暗号に詳しくないので間違ってるかもしれないが、劇中ではOZの暗号は55人に解読された(しかも主人公は凡ミスをして55人に含まれていない)が、例えば現代のRSA暗号をFacebookとMySpaceの全ユーザーにメールで送りつけたら一晩のうちに10人以上が解けるものだろうか?そんなすぐに解けてしまうアルゴリズムがあったら誰もRSA暗号なんて使ってないだろうが、まだまだ現役で使われてるので必勝アルゴリズムはまだ存在しない。現代のRSAですらその程度は頑強なのに、現代よりもいくらか技術水準が高そうな「サマーウォーズ」の世界で、ずっと脆弱な暗号システムを採用している、しかもそんな脆弱なセキュリティの上に成り立っているシステム内のアカウントが現実のインフラを操作できたりする重要な権限をもっている、なんてのは全くリアリティがない。

他にもいろいろと不満だったり納得いかなかったり期待はずれだったりしたところがあるが、「時をかける少女」が素晴らしかったから次もきっと良いだろうと期待して行く人が多かったであろうこの作品が、「時かけ」の緻密に計算された仕掛け満載の演出に比べて、ずいぶん稚拙な仕上がりだったことが一番がっかりした点だった。「時かけ」が素晴らしすぎたってことなのかなー。あれは物語も演出も素晴らしくて、良くない点が見つからないくらい良かったが、「サマーウォーズ」は物語もまるでファイナルファンタジーのようだったし(クリア条件だからとりあえず世界は救うけど動機は薄い)、演出も上で述べたように調査不足で粗いところが目立ったし、まるで比べものにならない出来だった。

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