SonicGarden の並河さん (id:rx7) が書いた Amazon EC2/S3 本。著者様より献本御礼(言ってみたかった!)。人生初です。ありがとうございます!*1
クラウドコンピューティングの概念から Amazon EC2/S3 をはじめとした AWS の各種サービスの紹介、そして AWS を利用したシステム設計と運用の話へと切り込んでいく。この本は Amazon EC2/S3 を仕事で使ってみようと思っているプログラマにオススメしたい。なぜなら「手堅い」から。
この本で最も役に立つ部分は 5章「Amazon EC2/S3 でのテスト/保守/運用のポイント」次いで 4章「Amazon EC2/S3 を活用したシステムの設計ポイント」だと思う。どちらも AWS を自分たちのビジネスに利用する場合どこに気をつければいいかについて書かれている。この内容がとても手堅い。例えば、本番環境とステージング環境では AWS のアカウントを別にしましょうとか。ステージング環境で無茶してアカウント停止を食らったり操作ミスをしたりしたとき、本番環境に悪影響を与えないためのちょっとしたノウハウなんだけど、こういうのは実際に痛い目にあったことがあるか、普段からディフェンシブな考え方をしていないとなかなか思いつかない。
仕事で Amazon EC2/S3 を使ってみようと思っているプログラマって、以前からクラウドコンピューティングに注目していて EC2 や Google App Engine なんかを個人的に試してみたことがあるひとだと思う。便利さや可能性を十分知っているから、はやく仕事にも活かしてみたくてうずうずしているはずで、そういうときはどうしても前のめりになって足もとがおろそかになりがちだ。Amazon EC2/S3 を利用する上では通常のレンタルサーバ/専用サーバとは事情が違う部分も少なくない。プライベートネットワークをつくれないので、サーバ間通信はすべて暗号化する必要があるとか。そういう地味で目立たないけど手を抜いてしまうとあとでツケを払うハメになりそうなところをしっかりおさえているのが 4章と 5章だ。
2章「Amazon EC2/S3 とその関連サービス」も詳しい。 EC2/S3 に関しては著者みずからのブログ (d:id:rx7) はもちろん、その他にもウェブ上に日本語の解説がたくさんあるので目に触れる機会も多い。けど、その他のサービス、例えば Elastic Block Store や Elastic Load Balancing や Amazon CloudFront などは個人で利用することは多くないだろうし、使わないだろうなと思っていると情報収集もおろそかになる。だから詳しい情報が載っているのはありがたい。
この本のキモは実践的なシステム設計/構築/運用/保守のノウハウにある。しっかり足場を踏み固めていくような堅実な内容は大手 SIer の社内ベンチャーという風土にもよるだろうし、著者の試行錯誤のたまものでもあるだろう。障害対応の事例紹介は実際に苦労されたあとがうかがえる。現場で手を動かすプログラマにとっては、心強いお守りになると思う。逆に、本屋のビジネス書コーナーに平積みされてる「クラウドほげほげ」みたいな仰々しい本とは全く趣の異なる本だから、「髪のとんがった上司」には向かない。
今年はやたらとクラウドって言葉がもてはやされたけど、実際に Amazon EC2/S3 なり Google App Engine なりを使ったのは「個人的な興味から試してみたプログラマ」がほとんどじゃないだろうか。そんななかで、世間的には海のものとも山のものともわからないクラウドコンピューティングってやつを、本気で自分たちのビジネスに使おうとし、実際に使ってみたひとが書いた本が「クラウド Amazon EC2/S3のすべて~実践者から学ぶ設計/構築/運用ノウハウ」だ。「実践者」ってタイトルは伊達じゃない。繰り返すけど 4章と 5章を読めば、著者が実践をかさねてきたことがわかるはずだ。
クラウドAMAZON EC2/S3のすべて (ITpro BOOKs)
- 作者: 並河祐貴,安達輝雄,ITpro/日経SYSTEMS
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2009/11/05
- メディア: 単行本
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*1:そして感想を書くのが遅くなって申し訳ありませんでした。。