糸柳とは面識がなく、エキセントリックな言動の人物らしいという評判をネット越しに見聞きしていただけなので何も語ることはないのだが、いくつかの言及を読んで思ったのは、
「死んでこれほど話題になるくらい人々の印象に残る人生は少し羨ましい」
もしおれが不慮の死を遂げたとして、生前のおれについて人々が言及する様子を想像するのは難しい。おそらく誰も何も書きはしないだろう。それはひとえに、言及に値するなにかを世に残さなかった実力不足ゆえであり、言及したくなるほどの人間関係を構築・維持してこなかったツケなのだが、
もし自分の人生で守るべきものを得なかったとしたら、人並みの生涯を送るよりも一瞬でも人々の注目を集めて散りたいという暗い誘惑に魅せられて奇抜な言動に走ったり、そうまでしても注意を惹きつけられない自分の凡庸さに絶望して失意のままこの世を去っていたかもしれないな、と