著者の id:tomoya さんから本をいただきました。ありがとうございます。
宣伝に偽りなし。 Atom の操作方法から内部構造まで丁寧かつ徹底的に解説した一冊だ。
Chrome DevTools しかり、 Web Components しかり、 2016 年に書籍で読む価値のある Web 技術の話であり、それぞれ単体で一冊の本になってもおかしくないトピックだ。それをテキストエディタの解説書でカバーしてしまう発想には脱帽する。
本題のテキストエディタの解説部分も抜かりない。まず目次からしてひと味違う。操作の名前(日本語)と対応するコマンド名(英語)が併記されているので、目当ての操作を見つけたらコマンドパレットにコマンド名を入力してすぐに使うことができる。さらに各項目の解説ページにはそのコマンドを呼び出すデフォルトのキーバインドも掲載されているので、メニューから機能を選ぶ初心者・コマンドパレットを駆使する中級者・キーバインドを指で暗記する上級者の誰にとっても役に立つ。
カスタマイズ方法の解説部分はさすがに Emacs の本を書いた著者だけあってマニアックで、おすすめパッケージ紹介の一発目に Emacs 相当のキーバインドを提供するパッケージが出てきたり、キーバインドのカスタマイズ方法にがっつり数ページを割いている(しかもまず最初に定義済みキーバインドの確認方法を持ってくる)あたり、10 年来の Emacs ユーザーとしては「わかってるなぁ」と頷くばかりだ。
これだけ濃い内容なのに実質 250 ページ以内におさまっているのだから大したものだ。分厚くないし、版の小ささもあって重くもなく、かさばらない。図表が豊富で文章も読みやすいので、本の薄さに輪をかけてさくさく読める。そして紙の本と同時に電子書籍も発売されているので、カバンや本棚を持っていない人でも安心だ(私も買いました)
惜しいのは、 Atom 自体もさることながらその土台となるものも進化がとてもはやいので、例えば Chrome DevTools の解説の図表などは発売日時点ですでに古くなってしまっていること(2016/07/14 時点の最新バージョンは Atom 1.8.0)印刷した時点で内容が永遠に決定されてしまう紙の宿命とはいえ、最新の状況にかなりキャッチアップしている本なだけに惜しい。内容の更新と再配布がしやすい電子書籍版での対応が望まれる。
Atom実践入門──進化し続けるハッカブルなエディタ (WEB+DB PRESS plus)
- 作者: 大竹智也
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2016/07/14
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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二年前に Emacs から Atom への乗り換えを試み挫折したが、この本をお供にもう一度トライしてみてもいいかな、と思った。