会社がスタートアップだった頃に「この人いざってときに頼りになるなぁ…」と思った人たちには、共通する特徴があると思う。
プロフェッショナルだけど、サラリーマンではないのだ。
仕事に対する責任感が人一倍強く、締め切りを守る。そのためならオーバーワークを厭わない。基本的に物事を他責にせず、周りがどうだろうが自分の責任として仕事を完遂する。無茶な要求にはきっぱりノーと言うが、現実的な代案を提示して着地させるし、そもそも「無茶」と判断する基準が高すぎるので、並の人ならとっくにサジを投げるような仕事も涼しい顔で片付ける。
それほど自分の仕事を終わらせることにこだわるのに、「仕事だから」を逃げる理由にしない。自分の仕事はここまで、とか、この仕事は他の人・チーム・部署の仕事だろう、とか、残業することになってしまうので、とか、基本的にそういう言い訳をしない。また休出しちゃったよ、などと軽口を叩くこともあるが、逆に楽しんでるかのようなそぶりで、そしてまた平然とハードワークをこなす。終わらせなければいけない仕事があれば、誰のタスクだとかそういうことは気にもとめずにさっさと片付けてしまう。
彼らは現実主義者で、天下国家を論じるようなことには興味を示さない。ひたすら目の前の現実を直視し、終わらせるべき仕事を終わらせる。仕事が終わってもいないのに「べき論」やら雑談やらにうつつを抜かしたりしない。「仕事が終わる」ということは、「自分のタスクが終わる」ことでもなく、「チームのカンバンがきれいになる」ことでもないことをわかっており、本当の意味で仕事が終わるまで決して気を緩めず、手を抜かない。ぬるさのカケラもなく、プロに徹する。
なのに彼らはいつも涼しい顔をしている。泊まり込みで徹夜した翌日ですら、疲れは見せても手を動かすことをやめない。彼らは自分のやっていることに納得している。それは他人から納得のいく説明をしてもらったからではなく、彼ら自身が「仕事」を選ぶにあたって勝手に納得したことだ。自分で考え、自分で選んで、自分で納得している。どこまでも自己責任だから、つらくても耐えられる。そのつらさですら、選んだのは他でもない自分なのだから。
こういう人は、実に少ない。スタートアップではない環境では、まずお目にかかれない。これは能力の問題というよりも、適性の問題だと思う。彼らはスタートアップでなければ生き生きと働けないのだ。そして、スタートアップで活躍できる人、結果を出せる人というのは、自分の知るごくごく限られた(数十人〜数百人程度の)観測範囲内の印象ではあるが、頭のネジが一本か二本抜けてるような「普通でない」感じがあると思う。そうでもなければ、本当の意味で、スタートアップという混沌とした環境を楽しめないと思うのだ。