哲学者・思想家のハンナ・アーレントが「エルサレムのアイヒマン」を書いた顛末を描いた映画。全体的に淡々と進むだけだが、最後の方でアーレントが大学の大教室で「悪の凡庸さ」などについての講義をするシーンはなかなかだった。それでも多くのユダヤ人にとっては受け入れ難い主張であったがゆえに多くの友人を失った様子も描かれていて、物悲しい余韻があった。何度かハイデガーとの邂逅の回顧シーンが出てくるが、ただのエロ親父としか描かれておらず、あれは何のためのシーンだったのか謎。あと、やはりアイヒマン裁判の実際の映像というのは、作品の中で使ってみたい誘惑にかられるものなのだろうか、とも思った。