@kyanny's blog

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「シリコンバレーを超えて」第9章で「レボリューション・メッセージング」という企業の活動が紹介されている。政治活動を支援する企業で、バーニー・サンダースを支援したことで名を上げたらしい。

ドナルド・トランプの選挙活動を支援した「ケンブリッジ・アナリティカ」という企業の手法と比較して、レボリューションのほうが良いという論調。

アナリティカは SNS その他オンラインで得られる個人情報を利用して非常に細かいターゲティングを行い、有権者ごとに異なる情報やニュースを(SNS のターゲティング広告として?)配信して特定の行動を促した。個人情報の収集に同意を得ないものもあったこと、ターゲティングのアルゴリズムが不透明であることが批判の的になっている。

一方のレボリューションはマイクロターゲティングではなく、逆に有権者の大きなグループ、特にミレニアル世代の若者などにリーチするためにテクノロジーを使った。この手法が透明性があるので良しとされている。

のだが。真逆の印象を受けた。レボリューションの提供するシステムは SMS の一斉配信と電話の統計情報モニタリングで、ターゲティング要素はゼロ、従って「不透明なアルゴリズムによって意図せず行動を誘導されている」という懸念がない、ので良い、という主張なのだが、むしろ大衆を煽動している感が強い。「有権者が関心を持っていて、実際に行動で変化に関われる事柄を毎日一つテキストで送る」そうだが、何を送り何を送らないかは恣意的に決められるわけで、メッセージを受け取る側からみて「決定に用いられたアルゴリズム」が不透明なことには変わりない。コンピュータが決めたのか人間が決めたのかの違いだけで、人間が決めたから不透明ではないというのはおかしい。

さらに、SMS には「この団体に電話をかけろ」のような指示が含まれていて、それに応じて何人が何回電話をかけて何時間話したかなどのデータを収集していたという。どういう仕組みかは言及されてなかったが、その統計情報を根拠に「有権者はこの問題にこれだけ関心がある」と示し、それを選挙活動を有利に進めることに活かしたようだ。議員やロビー団体などへの抗議活動には電話が一番効くから、らしいが、トランプ就任後ホワイトハウスが(抗議の多さゆえ)一般向けの意見申し立て用電話回線を閉じたら、トランプが所有する企業などの電話番号をテキストで一斉配信し「ここに抗議の電話をかけろ」と指示したらしい。これは一般大衆を煽動して威力業務妨害してることにはならないのか?

だんだん、この本の著者とは思想信条が異なりそうだとわかってきた。