あのジョエル・スポルスキが Microsoft Excel の使いこなしテクニックを次々と紹介していく動画。聞き取りはちょっと苦労するけどノリノリで面白い。そして内容がとても実用的。この人なんでこんなに詳しいんだと思ったら、そもそも Microsoft Excel の Program Manager としてキャリアをスタートさせてたのか。そりゃ詳しいわけだ。
かなり濃密で充実したレッスンだった。かなりおすすめ。単なる機能やショートカットの紹介だけでなく、裏側の理屈とか具体的なユースケース(デモ)込みなのでとてもわかりやすいし、納得感も高い。
これはという内容、これを知れてよかったというのもたくさんあるけど、衝撃を受けたり理解が深まったものとしては、
- A1 vs R1C1
- A1B2 みたいなセルの番地表現、長年意味不明だと思っていたけど、セルの番地は実は行列(Row/Column)で表現されていて、なぜか A1B2 みたいなのがデフォルトになってるけど R1C1 みたいな表記に変えることができる(これはぼんやり聞いたことあった)
- これを知ると、オートフィルが動く理由がすんなり理解できる。魔法ではなくて、R[-1]C みたいな相対表記で「前の行」を参照しているだけだ、と。これはプログラマには非常にわかりやすい。
- Cmd+T でセルの参照の相対・絶対表記を切り替えられる!もう $ を手で打たなくていい!しかも行列片方だけ絶対→両方絶対、とかもくるくると循環で切り替わる。これは驚異的に便利。文字で説明してもピンとこないと思うのでぜひ動画を見てほしい。割と序盤で紹介される。
- 複数セルに同じ値を入れるときは一個目のセルに値を入れて Cmd+Enter で確定すれば一気に入力される。
- 数値とかを入力して Enter (Return) すると通常はカーソルが下の行に移動する。データを縦ではなく横に入力したい場合、TAB を使う必要があるが、入力したい範囲をあらかじめ選択しておいてから入力し始めると、Enter で範囲内の次のセルに移動してくれる!つまり横方向に数セル選択しておけばサクサク入力できる!これも動画のデモが説得力ある。
- Paint Formats。セルの書式設定だけコピーして他のセルにペーストできる。地味だけどこういう作業を手でやるとマウス操作回数が多くて大変なので知ってると効率化できそう。
- セルの書式設定が数値のセルに 0 で始まるデータを入力すると先頭の 0 がなくなってしまうが、'0... とシングルクォートから入力するとエスケープできる。ただこれは書式設定を文字列とかにしたほうが良い。
- セルに名前を付けられる!(変数)その名前を関数式の中で使える!つまり =A1-B1 とかじゃなくて =SALES-COST みたいに人間が読んで意味のある計算式にできるということ。これはとても強力そうで、動画の中でも割と強調されていた気がする。
- セルだけじゃなく列にも名前を付けられる!
- VLOOKUP は使うな、と言ってて、「え?Excel を実務で使うとき VLOOKUP を使えるかどうかが習熟の分かれ目的な感じなんじゃなかったっけ?そう聞いたことがある気がするが」と思ったが、遅いしわかりにくいからダメなのだという。代わりに INDEX と MATCH を使え、数式を読んで(英語話者的には)それだけで何を求めているかわかるのでこっちの方がいいんだと。数式のカッコが二重より多くなったらダメとか、複雑すぎる使い方をするのはダメだということを動画の後半で再三言っていた。
- テーブル機能を使おう。テーブル内の行が増えた場合も数式がよしなに変更されたりして便利。
- Ctrl+` でセルのデータと数式の表示を切り替えられる!「誰かが作った巨大なスプレッドシートファイルを手に入れて、何やってるか調査するときとかに便利」とのこと。
- Goal Seek 機能というのがあって、なんか最適な計算式を求める際の試行錯誤を自動化してくれる?使い所はピンとこないがデモは面白かった。
- Pivot Table。これは最後のほう、advanced 寄りな内容という扱いで紹介されていて、やっぱピボットテーブルってかなり難しい上級者向けの機能だよなあ、なのにスプレッドシート使う人たちはこぞってピボットテーブル(と VLOOKUP)を使いまくるし、それが使えて当然という顔をしているけど、やっぱあれは本当のプロからするとイキってるだけなのかもな、というひねくれた学びがあった。
「あの Tips なんだっけ」と復習したくなったときに動画を最初から見直す必要はなくて、Trello ボードにネタが書いてある。内容をなんとなく覚えていればカードに書いてあることだけで「ああ、あれね」と動画で見たデモの内容を連想して思い出せる。ネタ帳というかプレゼンのスクリプトというか、そういう用途に Trello を使うってのもちょっとよくわからないなと思ったけど、この人そういえば Trello の創業者でもあったのだった。そりゃ使うよな。
https://trello.com/b/HGITnpih/you-suck-at-excel
動画の概要欄にもある Apologies to Donnie Hoyle ってなんのことだろうと思ったら、You Suck At Photoshop) という有名な(知らなかったけど)お笑い動画にインスパイアされたつくりになっているかららしい(動画の語り出しの部分とか)。
ブラックユーモアというか、大人の笑い的なテイストのやつで、シリーズ一作目は確かに面白くて笑ったのだけど、全体的にトーンが暗く、ちょっとマジで笑えないなあという感じがして、途中で見るのをやめてしまった。