この夏の三大アニメ映画は一通り目を通しておきたいと思っていたので、今日はゲド戦記をみてきた。
結論からいうと、面白い。映画館に足を運んで金と時間を費やす価値は十二分にある。偉大な父・宮崎駿氏の業績と比較しても決して引けをとらない出来だった。
前前から、ネットでのゲド戦記の評判の悪さは目にしていて、やれ「意味がわからない」だの、やれ「親の七光り」だのと、ネガティブな感想が大半を占めているような事前の印象だった。で、今日はいろいろ用事を済ませて、暑かったし家でのんびりしようか、でも土曜のうちにみておきたいな、と思ったのでみにいった。
劇場はさいたま新都心の MOVIX さいたま、 20:40 からの回で、十分前に行ったがすんなり入れた。運良くレイトショー料金だった。客は四割程度の入りで、時間が遅いのもあるけどやっぱ客足イマイチなのかな、なんて思ったりした。
お話のほうはというと、確かに唐突な展開が何点かあって、駆け足なところもあったけど、ファンタジーだしこんなものかなと思う。それから、話の意味がわからないとか、とっちらかってるとかいう感想は全くもって間違っていると思う。作品のテーマは今までのジブリ作品のどれよりも明確だったんじゃないか。「生命の尊さ」を、劇中で登場人物たちが繰り返し繰り返し訴えていた。あれをみてテーマがわからないってことはないだろう。敵の魔法使いというかモンスターというか、姿かたちが結構怖くて、その点で子どもがみたら怖がるかもな、と思ったが、俺が小学生の頃もドラえもんの魔界大冒険は見ていたのだからこんなものかな、とも思う(ちなみに魔界大冒険は小学生の俺にはちょっと怖すぎた)あと、時をかける少女と比較すると、時かけは「うおーなんだかスゲーなめらかに動く!」というびっくり感が強かったのだが、ゲド戦記はそういうびっくり感は皆無で、そういう部分が批判されているのかなとも思ったけど、安心アニメの代名詞みたいなジブリ作品なのだから、アニメーションがまったく自己主張しないのはむしろ美徳というか、期待されていることを見事にやってのけているだけじゃないのかと思った。
以前、ウタダヒカルの旦那がキャシャーンを作ったときに、それはそれは評判が悪かったので、どんなもんじゃろとみにいったら案外楽しくみれたことがあったので、今回もそんな予感がしていたが、やはりというか予想以上にというか、面白い映画だった。もう一回くらい見てもいいかなと思った。
なんというか、この映画をまだみてないのに「どうせクソなんだろwwww」とかいってるひとがいるかもしれないけど、そういう人にこそみてほしいと思ってつくられた映画な気がする。現代の日本の社会の閉塞感みたいなもの、ニートだとか引きこもりだとかが社会問題として偉い大人たちの議題にあがって、暗いニュースがたえない、そんなところへスタジオジブリと宮崎吾郎監督が投げかける答えがあったと思う。
ゲド戦記のひとつ前のスタジオジブリ作品であるハウルの動く城は結局みていなくて、それはその前の千と千尋の神隠しがはっきりいってあんまり面白くなかったからで、そう思った遠因にはそのさらにまえのもののけ姫がやっぱりあんまり面白くなかったことがあり、そういう意味でスタジオジブリ作品には世間一般ほどもともと期待してなかったのだけど、ゲド戦記は少なくとももののけ姫と千と千尋の神隠しよりずっとわかりやすいお話だったし、たぶんハウルの動く城より面白いような気がする。
時をかける少女がとてもよかったから、残り二つはチェックしなくてもいいか・・・と思っていたけど、二つ目が予想以上に面白かったので、こうなったら三つ目も是非ともみておきたい。優劣を競ってもしかたないし、それこそすでにみたふたつの間でもそれぞれ優れているところはあるのだけど、どうせなら制覇しておきたい。