おもしろかった。タイトルが内容をよく要約している。
- 人生100年時代には、現役で働く期間を伸ばすしかない
- 定年後もゆとりある収入を得るには、オーナー社長になるのがよい
- しかしゼロイチの起業は難易度が高すぎるからやめておけ
- 飲食店経営にだけは絶対に手を出してはいけない
- 大企業の中間管理職経験者なら旧態依然とした経営手法の中小企業の業績改善などたやすい
- 世の中には100万社以上の「後継者がいない」中小企業がある
- 黒字経営・優良なのに廃業必至な中小企業をM&Aして、事業を丸ごと(人・設備・ビジネスモデル等)継承せよ
- 中小企業の売り手と買い手をマッチングさせるサービスもあるし、いろいろ工夫すれば自己資金無しでも個人で企業買収できる
しかしこの話には裏があるだろうな、とも思った。
ある食材卸を営む実業家の話が出てくる。曰く、飲食店経営を始めたい人から相談を受けると開店資金を貸し付け、金利で儲ける。次に自分の食材を仕入れてもらうことで、本業で売り上げが上がる。さらに自身が所有する物件を出店場所として紹介し、テナント料も徴収する。そうして地価が上がるとビルを売却してキャピタルゲインを得る。
これを読んで、ハゲタカおそろしや、と思ったし、資本家・資産家になるにはこのように頭が働かないと、食うか食われるかの世界では生きていけないのだろう、とも思った。中小企業M&Aの世界にもおそらく、素人オーナー社長にいろいろ手を差し伸べつつ利益を得る仲介ビジネスはあって、この本の読者などはまさに格好の獲物なのではないかな、と思った。
とはいえ、「サラリーマンが会社を買う」というコンセプトの斬新さは色褪せないし、自分の将来を考える上でも大いにインスパイアされた。腕一本で生きていく職人のような仕事観が正義だと思ってやってきたけど(だからこそ管理職に「落ちぶれた」ことに折り合いをつけるのに苦労し続けてきたわけだけど)、管理職の経験もこんな風に活きることもあるのだと知れたし、将来会社を買ってオーナー社長になる可能性もあるのなら、財務諸表くらいは読めるようになりたいと思いつつ勉強するほどモチベーションが湧かなかった会計でもかじってみるか、という気持ちにもなり、新しい・専門分野外のことを学ぶ意欲が湧いた。
サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい 人生100年時代の個人M&A入門 (講談社+α新書)
- 作者: 三戸政和
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2018/04/20
- メディア: 新書
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