@kyanny's blog

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Re: 25: Inefficiency makes value - Middle Aged Developers #madevs

マイクロソフトのインパクト評価

これねえ…。評価制度はなんであれ有利に働く職種とそうでないのがあり、それは制度の制定者がどの職種を重んじているかを反映しているのだという前提に立てば、良し悪しの話ではないのは理解できる。のだが、職種というか仕事内容によって有利不利の差が大きくなる制度というか仕組みだなあと思う。

自分に置き換えると、顧客サポートの仕事は「インパクト重視」が不利な職種だと思う。基本的にリアクティブな仕事なので、インパクトの大小と無関係な優先順位に基づいて仕事をしないといけない。インパクトが大きい仕事を選ぶ・小さい仕事を選ばない、という裁量が無い、あっても非常に少ない。将来的なインパクトを見越した動きもとれなくはないが、限定的だ(社内外のドキュメントやツール、プロセス整備とか。AI アシスタントのアルゴリズム改善、みたいな「大きなインパクト」は出せない)。

と同時に、インパクト重視でメリハリをつけないほうが望ましい側面すらある。支払額に十倍の差がある A 社と B 社があるとして、「ビジネスへのインパクト」を考えたら十倍儲かるほうを十倍優先的に対応しないと割に合わないが、サポート担当者全員がそういう対応をしたら小規模な顧客を大勢失うだろう(これは単純化した例で、実際はもちろん色々な要素を検討して「インパクト」を算出するわけだが)。

そもそも「インパクトとは何か」を正しく理解できていない自覚もうっすらある。そういう大きな視点でとらえる努力をしなくなるのが、大企業で平社員をやることのデメリットの一つだなと最近わかってきた。要は「目線が下がる」わけだ(ここでは掘り下げない)。正しく理解すれば(正しくというか、「インパクトを考えろ」と言っている偉い人の立場になって意図を理解しようとつとめれば)どんな仕事内容であれ「インパクト」を出すアイデアは湧くのかもしれないし、そもそも「インパクト」を出すのは難しいだなんて思わない(思い込まない)のかもしれないが。

なのでおれは「インパクト評価」という評価制度自体にはフラットな立場だけど、近年のマイクロソフトの(再)躍進をみるに、この評価制度を考えて実施した偉い人(ナデラさん)はとても良い仕事をしたのだなとは思う。この制度で高く評価される人々が頑張って活躍することが会社の成長に大きく寄与する(そうではない人々を評価するよりも)、ということを見抜いていたわけだから。