@kyanny's blog

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興行としてのサッカー #zweigen

ツエーゲン金沢の 2025 シーズン陣容がほぼ固まった。残留・契約更新組のなかでは西谷和希のコメントが際立っていた。

2025シーズンもツエーゲン金沢でプレーさせていただくことになりました。 今シーズン凄く苦しんでいた僕に手を差し伸べてくれた伊藤彰監督、そしてそんな僕を暖かく迎え入れてくださったファンサポーターの皆様に凄く感謝しています。 僕は伊藤彰監督とサッカーがしたくて金沢に来ました。 なんとしても優勝して監督を胴上げしたいと思います。 そのために自分の待ってる力を出し尽くして、持っていない力を努力で補い優勝するために全てをかけて闘いたい思います。 結果を残すことがクラブ、ファン・サポーターの方々への恩返しになると思ってます。 美しく熱く闘います。 来シーズンも素晴らしい応援をよろしくお願いします。

一人だけ、見ている景色が違う、と感じた。

「美しく熱く闘います。」

本人の美学によるところも大きいのだろうとは思うが、勝てばなんでも良いわけではない、という意識を持っているのは、プロサッカー選手としての意識の高さを示していると思う。

辻田強化部長のインタビューでも、似たような言及があった。

ツエーゲン金沢を応援していることが、関わっているみなさんの人生を豊かにすることができるんじゃないかと思っています。だからこそ、ピッチのなかで選手やスタッフは戦わなければいけない。最後まで走り切るとか、戦い切るとか、そういう姿を(観客は)結果を問わず見たいと思っているはずです。

僕は戦術は手段だと思っています。やっぱり大前提は勝てるのか、勝ちにいくためのサッカーなのかということ。それは大事だと思っています。速いサッカーであっても、ゆっくりしたサッカーであっても、パスサッカーであってもフィジカルサッカーでも構わない。でも、勝つためのサッカーなのかとか、応援したいと思ってもらえるサッカーなのかということは、切り離せいない。興行なので自己満足では絶対に片付けられない。

観客はお金を払ってプロの試合を観にくる。もちろん勝つところを見たいが、常勝・全勝とはいかないことは誰もがわかっている。負けるかもしれなくてもわざわざ見に行くのは、勝ち負け以外のところにも価値を見出しているからだ。選手たちが美しく熱く闘う姿を見に行っているのだ。

こういう姿勢をこそ「プロ意識」と呼ぶのだと思うし、そういう選手は応援したくなる。ので、2025 シーズンのユニフォームは夫婦揃って西谷和希のネーム・背番号を選んだ。もちろんプレーも魅力的で素晴らしいが、ファン・サポーターとしては取り組む姿勢、スタンス、精神性のような、ピッチの上では見えづらいもの、数字に表れないものをむしろ積極的に評価したい。

姿勢という点では櫻井風我のコメントも良かった。

2025シーズンは、 チームと個人の「勝ち」、 自身の「価値」に拘ります。

僕は負けることが大嫌いです。 勝ちへの執着、 魂のこもったプレーを是非スタジアムで。 走って走って走りまくって、金沢に我の風を!

ピッチ上でみせる積極的なプレースタイルに違わず、前のめりで勢いを感じる。こういう選手も応援したくなる(ユニフォームはかなり迷った)。

2025 シーズン、誰もが「今年こそ昇格」と意気込んでいるだろうし、更新・加入した選手のコメントも軒並み昇格に触れていた。最重要目標であるのは間違いないが、「勝ちさえすればよい、昇格すればそれでよい」というムードにはなってほしくない。極端な結果至上主義はモラルの軽視やルールの曲解に繋がり(2024 シーズン前半の J1 リーグはこの話題でもちきりだったわけだが)、いずれは不正や悲劇を招く。「やらなきゃ意味ないよ」の教訓を忘れてはいけない。

2024 シーズンから、伊藤彰監督は再三「上のカテゴリーでも勝てるサッカー」に言及してきた。これも監督の美学によるところが大きいのだろうとは思うが、「勝ち方」にもこだわることは、ツエーゲン金沢というプロサッカークラブがこれから先も、すべての選手やスタッフが総入れ替えしてしまうくらい未来においても、ファン・サポーターに愛され、「客を呼べる」興行主であり続けるためには避けて通れないトピックだと思う。