「このミス」の文庫グランプリをとった小説。SNS で見かけて少し気になっていた。本屋で「このミス」大賞作品が平置きで売ってたのをみて、しかしそちらはあまり好みでなさそうな印象だったのでこちらを買った。
学がないので読み進めるまで書名の意味がわからなかった。わかってから思うのは、ちょっと気取りすぎかな。「すべてが F になる」みたいな緊張感ある感じにしたかったのかな、的な。
話はけっこうさくさく進むが、進むにつれて新しい謎も現れる感じなので、ある程度展開が読めても続きを読む意欲は保たれた。短い伏線も長い伏線もうまく回収している。
主人公視点の章になると地の文が一人称になるのには違和感を覚えた。解説を読むと意図して書き分けるテクニックなのだという話だが、このスタイルはあまり好みではないことがわかった。
「誰にでも、本当の意味で自分の人生を生きる時期が必ずどこかで訪れるのだと思います。それは人によっては人生の大半かもしれないし、あるいは数年、数日、もしくはほんの一瞬かもしれない。それが過ぎ去ってしまえば、あとはその思い出を人生の伴侶として日々を浪費するだけ。悠さんならわかりますよね」