@kyanny's blog

外交というものは、形をかえた戦争の継続状態である - 周恩来 中国の政治家

悩む力

つまらなかった。

著者は夏目漱石ファンのようで漱石の作品の引用とか「私はこう解釈しました」みたいな話が多いけど、「どうもこの人○○の分野には不勉強そうなのに知ってる範囲で語ってしまっていて中途半端に見えるなあ」というのが結構多かった。

梅田望夫氏の「ウェブ時代をゆく」とかの対極に立っている本だなーと思った。「ウェブ時代をゆく」に書いてある内容に大きく頷けるような人は「悩む力」を読んでも「はぁ?」と感じてしまうんじゃないかと思う。

タイトルがタイトルなので、加藤諦三氏のような(っていっても著作一冊くらいしか読んだことないけど)、「悩める人よ、苦悩は素晴らしい、頑張れ」みたいなのを想像してたけど、全く期待はずれだった。

「昔の人は、属する共同体が信じる宗教が必ずあって、その宗教の教義に善悪の判断などをゆだねて生きていればよかったから気楽で幸せだった、現代の我々には宗教にあたる心のよりどころがなくて個人の責任で判断していかなくてはならないから精神的には貧しく辛い」とかいう主張も、何言ってんだろコイツとしか思えなかった。昔の人の中にだって、「みんなが信じて疑わない神を信じられない私」みたいな心の問題を抱えてる人もいただろうに。そして現代社会にも神や宗教を最大のよりどころとして生活している人はたくさんいるだろうに(新興宗教にはまっているとか、未開の地にすんでいるとかじゃなくて、世界的な宗教を信仰している文明国の住人)。

「ウェブ時代をゆく」がポジティブに表現したような情報化社会、競争社会のもつ裏の顔というか、危険性、弱者がさらに弱くなってしまう構造の危険性を指摘していこうという本書の姿勢じたいは悪くないんだけど、全体にただ暗めのトーンで夏目漱石も暗い人生でした、とか言ってるだけでは本として弱すぎると思う。実際にいま自分が弱者になりつつあるかも?と悩んでいる人を、強くなりなさいと勇気づけることも、弱いままでいいんだと慰めることもできず、時代がそうなっているから仕方ないねって漱石も昔言ってました、と言っているだけでどうとも思えない本だった。

悩む力 (集英社新書 444C)

悩む力 (集英社新書 444C)