いかにもカルト教団を扱った話という感じのタイトル・表紙で、前々から気になっていた。長そうなので買うのに勢いが必要だった。
寝かせたぶん、期待が大きくなりすぎた。
作中でもオウムや 9.11 への言及があるが、それらの後に書かれたフィクションとして、現実を超えられていない。これならオウムのルポルタージュでも読んだほうがずっとおもしろいんじゃないかと思った。
何度も差し込まれる説教(説話)も薄っぺらくて白けた。が、これは風刺と捉えれば悪くないのかもしれない。いいことも書いてあって、「我々はなぜ存在するのか、人生の物語を紡ぐためではないか。我々は物語を必要としているのだ。人生の物語に優劣はない、ただ一生懸命生きればいい」とか、そういう。ただ、これがカルト宗教の話だということを勘定に入れると、カルトにはまってしまうような人は「人生に優劣はない」と言われて納得しなそうだし(自分の人生が他人より優れていて欲しいけどそうではないことを受け入れられなくて、ドラマチックな人生に憧れて道を誤る)、逆にこう言われて素直に感激してしまうのも、騙されやすい人という感じでやはりカルトにはまりそうだなとか、メタな思考が邪魔してすんなり受け入れられなかった(のでおれはまだ大丈夫なのだと思いたい)。
中村文則は「去年の冬、きみと別れ」を読んだが、それも表紙の色合いと雰囲気以外何も印象に残ってなくて、好みじゃない作家なんだろうなと思ったらブログの感想は好評で、我ながらいい加減なものだ。そして 2019 年 11 月とは、意外に最近だ。