@kyanny's blog

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キャラクター(ネタバレあり)

絵は上手いがキャラデザのセンスがない漫画家がたまたま居合わせた殺人現場をネタに描いた漫画が大ヒットするも、その場でチラ見した犯人が漫画をなぞって殺人をし始めて……という話。

流血・血しぶき・刃物を突き刺すシーンなど、スプラッタな描写に自信がありますといかにも言いたげな演出だったが、それがまったくリアリティを感じずちっとも怖くない、という致命的な欠陥がある作品。そもそもストーリーが「リアルな犯罪を描けない善人漫画家がマジの殺人を目撃してリアリティを獲得した」という話なのに、これではまったく矛盾している。

中盤で小栗旬が殺されるのには驚いた。まさかここでこの主要キャラクターを殺すのか!?と、ここがこの映画のクライマックスだと思う。見事な捨て駒の使い方だった。

作中の時間経過も謎だった。菅田将暉が殺人現場を目撃してから犯人が漫画になぞらえた二回目の殺人をするまでいきなり一年以上すっ飛ばしたのに、三回目と四回目は高畑充希の妊娠が確定してから出産までの間の数ヶ月に行われた。週刊誌か月刊誌かわからないが連載ペースで物語が進む速度と犯人の殺人ペースがちょっとあってないと思う。

高畑充希が実は双子を妊娠していて、それが「幸せな四人家族を狙う」犯人の最後のターゲットになる、という展開はすぐにピンときた。菅田将暉の両親が再婚で、実家をおとりに使っておびき出すつもりが「本物じゃない」と犯人に喝破されるところはなかなか良かった。

宗教じみたコミュニティの出自が犯人の人格を歪めただろうことや、一見無関係そうな元犯罪者のおっさんとの隠れた関係性など、もう少し深掘りしたら面白そうなネタが浅く消費されていたのは残念。ただ尺的にはあのへんを削るのは仕方ないとも思う。

ラストシーン、高畑充希が視線を感じて振り返ってから流れるエンドロールの最後で刃物を抜くシャリンという音が二回鳴ったが、そこは一回じゃないの!?と違和感があった。あそこで刃物を抜けるのは逃亡していたおっさん一人、劇中で二刀流のシーンは一度もなかったからやはり効果音は一回が正しいはず。双子が相手だから二回、とも考えづらい(それなら三回であるべき)、高畑充希と菅田将暉の二人だから二回というのも無理がある(四回であるべき)。なので意図よりも効果音のカッコよさ優先で二回鳴らしたというのが妥当な解釈だと思うが、あえて不安な余韻を残す終わり方をするなら最後の細部までこだわって欲しかった。

なんやかんやと注文をつけたが、いろいろ言いたくなる程度には面白かった。