@kyanny's blog

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オカムラのスフィア(Spher)を注文した

いつか高級なワークチェアを買おうと誓って十五年余、経済的にも余裕ができ十分な広さの部屋も手に入れて、いまがそのときだとばかりに家具店へ行っていくつか試座し、オカムラの Spher(スフィア)を注文した。

www.okamura.co.jp

株式会社オカムラ | チェア/ソファ | スフィア

注文した仕様は以下のとおり。カタログの品番でいうと CT4EFC FRU6 に該当する。

  • ヘッドレスト: あり(エクストラハイバック)
  • アーム: 可動式(アジャストアーム)
  • 座面奥行き調節: あり
  • キャスター: ホロー(ウレタン)
  • ハンガー: なし
  • 張材: リネット
  • カラー: セージ
  • ボディカラー: ホワイト

決め手は座ったときの全体的なフィット感の良さ。以下、他に試座した展示品も含めて感想を述べたい。

行ったお店は東京インテリア家具 金沢店。オフィスチェアコーナーに展示してあったもののうち、試座したのは以下。

本命はオカムラのバロンだったが、残念ながら展示品はなし。オカムラのサブリナも、その独特なデザインの美しさに魅せられていたが、やはり展示品なし。バロンはコンテッサ セコンダとだいたい同じ傾向で、サブリナもシルフィーと似た特徴を持つモデルだろうということで、コンテッサ セコンダとシルフィーの試座中はバロンとサブリナも脳内に思い描いていた。

だいたい試座した順に書いていく。コンテッサ セコンダ、シルフィー、スフィアには何度も座って座り心地や操作感を確かめた。

オカムラ コンテッサ セコンダ

言わずと知れたオカムラのオフィスチェアのフラッグシップモデル。憧れのモデルでもあった。

展示品の仕様は背面メッシュ・座面クッション・エクストラハイバック(大型固定ヘッドレスト)・アジャストアーム。

座面クッションの座り心地はとても良かった。最大の特徴であるスマートオペレーションも操作しやすく、特にリクライニングの調整のしやすさは毎日何度も使う機能として魅力的だった。

気になったのは座面の奥行きで、最大まで前に出しても自分の体格では長さがやや物足りなかった。リクライニングを倒して後傾姿勢を取ると座る位置も少し前方にずらす感じになるが、そうすると太ももの膝に近いあたりが座面に接しないので脚への負担が少し増す。この辺りの微妙な感覚が、イマイチしっくりこなかった。

背面のメッシュも、上半身を預けたときのフィット感・ホールド感をあまり感じられなかった。短時間だったこともあるし、むしろ何も感じないのはそれだけ自然にフィットしているからだという考え方もあるが、どこか物足りなさを感じた。

アームレストの可動域も狭く、不便を感じるほどではなさそうだったが、やはり値段を考えると物足りなかった。

総じて、値段や評判とは裏腹に、特徴の薄い平凡な椅子という印象を受けた。コンテッサ セコンダだけ他のオカムラ製品より納期が遅いらしく、それもネガティブ要因だった。

オカムラ シルフィー

オカムラのオフィスチェアの中では中堅モデルだが、大手オフィス家具通販サイト Kagg.jp では人気 No.1・最も売れている商品とのことで、東京インテリアの店員さんも「オカムラの中では一番人気・売れている」と言っていた。

展示品は二台あり、一台目の仕様は背面メッシュ・座面クッション・エクストラハイバック・アジャストアーム。二台目の仕様は背面クッション・座面クッション・ハイバック・アームなし。

シルフィーで良かったのはバックカーブアジャスト機構で、腰の後ろあたりにあるレバーを操作すると背面シートの曲がり具合を強めたり緩めたりできる。強めれば腰回りのフィット感・サポート感が増す。これがなかなか具合が良く、集中して作業したいときや疲れて身体を支えづらくなったときに効果が高そうだった。いわゆるランバーサポートの一種だと思うが、前に迫り出すのではなく両脇から締め付けるような形。締め付けた形状だとそれはそれで長く座ったときに身体に負担がかかったり痛めたりしそうなので、自由に調整できるのはありがたい。調整もしやすい。

逆に良くなかったのはリクライニング機構で、座面左下側のダイヤルで操作するのだがこれがとてもやりづらい。ダイヤルの位置は三つあり、基本的に前に回すとリクライニングが可動・後ろに回すと固定という挙動だが、シルフィーの特徴である前傾姿勢にする場合のために三つ目の位置があり、単純なオンオフではないので操作が難しい。ダイヤル自体の位置も悪く、座面下の前の方についているのでダイヤルを操作するときは上半身を起こさないと手が届かない。後傾姿勢で身体を倒した状態からリクライニングを操作して椅子と身体を立てる動作は割とよくしそうなものだが、そういう場合はまず自力で上半身を起こさないといけない。この操作性の悪さは毎日何度も使うものとしては問題と感じた。

座面クッションの座り心地はそこそこで、コンテッサ セコンダと比べるとやはりやや落ちる印象だった。座面の奥行き調整も可能だが、コンテッサ セコンダ同様、一番前まで出してもやや物足りなかった(それでも、浅く腰掛けたときの太ももの感触はコンテッサ セコンダよりは良かった)。背面メッシュとクッション両方座り比べてみたが、クッションの方がややしっかりしていて座り心地が良く感じたものの、そこまでの差は感じなかった。

可動アームレストの可動域は広く、ハの字型に角度を変えられるのでパソコンのキーボードを叩くときに腕を支えやすい角度にできる、と店員さんが言っていた。割と幅広なので角度を変えなくても十分腕を支えてくれそうだった。

バックカーブアジャスト機構は大いに気に入ったが、リクライニングの操作性の悪さは大いにマイナス、という結果だった。全体的な作りはやはり値段相応のチープさを感じる部分があり、上位モデルとはこういうところに差が出るのだなと思った。コンテッサ セコンダよりはかなり安く(およそ半額)、もしスフィアに座らなかったら、操作に慣れることを祈ってこれを買っていたと思う。

エルゴヒューマン プロ

オカムラ製品・ハーマンミラーのアーロンチェアと並んで有名な、ランバーサポートに定評がある高級ワークチェア。オカムラ製品の隣のテーブルに置いてあったので、せっかくだからと座ってみた。

展示品の仕様は背面メッシュ・座面クッション・ヘッドレストあり・オットマンあり。

座面右下のレバーでほとんどの調整を行うタイプで、リクライニングの調整はやりやすかった。座面の奥行き調整は内部にバネが仕込んであるらしく、座面を奥に引っ込める力が働くので前に出すときは結構力を入れて操作しないといけない。他の操作性が良かっただけに、ここだけ操作しづらいのはやや残念だった。座面はかなり前に出せて、コンテッサ セコンダよりも太もものフィット感・サポート感は良かった。

特徴であるランバーサポートはさすがにしっかりしていて、良くも悪くも主張が強く、身体をしっかり支えてくれる感触は良かった反面、長時間座り続けたときに違和感が強まらないか気になった。リクライニングを倒したときに腰の後ろが持ち上げられる感じになるのも、リラックスして休憩するのには向かないように感じた。

オットマンも試してみたが、これは正直いってだいぶちゃちな作りに感じた。小さなメッシュ地なので足を置くスペースは狭く、固定した状態でも足を動かすと割と上下に揺れる。高さもそこまで高くならず、これでは脚を伸ばしてリラックスという体勢にはほど遠いと感じた。自宅のリビングには横に寝そべられるソファがあり、腰掛けた状態で脚をまっすぐ投げ出せるオットマンも付属しているので、エルゴヒューマン プロのオットマンは自分にとってはますます不要な機能だった。

座面クッションの座り心地はあまり良くなく、オカムラ製品と比べると明らかに硬くて疲れそうだった。背面メッシュのフィット感・サポート感は可もなく不可もなくといった印象。ランバーサポートの印象が強すぎた。

ランバーサポートのおかげで集中して作業できそうなのは好印象だった反面、座面の長さやオットマンによって後傾姿勢のリラックス度合いを高めようという工夫がランバーサポートの突き上げのせいで相殺されてしまっており、ちぐはぐな印象を受けた。コンセプトと周辺機能のデザインがマッチしてなくてもったいないと思う。

よく知らない海外製のメッシュワークチェア

エルゴヒューマン プロの向かいにあった。店員さんによると海外から直接仕入れているものらしい。総メッシュの椅子も座っておくかということで一応座ってみた。

展示品の仕様は、背面メッシュ・座面メッシュ・ヘッドレストあり・可動アームレストあり。

座った瞬間、座面の硬さが太ももに伝わってきて、こりゃ無理だと思った。思えばこれまでオフィスなどでアーロンチェアやバロンなどに何度か座ったことがあるが、座面メッシュの椅子はかっこいいけど座り心地を良いと思ったことはなかった。椅子全体の形はコンテッサ セコンダやフィノラなどオカムラ製品に似ていたが、座面の前方のカーブの具合などはアーロンチェアっぽくもあった。

全然興味なかったし座ってみても好印象は抱かなかったけど、やはり座面メッシュは合わなそう、ということを確認できたのはこの椅子のおかげだったので座ってみて良かった。おかげでその後オカムラ製品を吟味する際、座面メッシュを選択肢から外せた。

オカムラ フィノラ

コンテッサ セコンダの隣にひっそりと(実際はででんとだが視界に入ってなかった)置いてあった。コンテッサ セコンダかシルフィーの色違いかと思ってたけど違った。

展示品の仕様は背面メッシュ・座面はうろ覚えだがメッシュだったような?エクストラハイバック・アームは忘れた。

このモデルの特徴がわからなくて店員さんに聞いてみたら「デザイン(性の高さ)」という答えが返ってきたけど、正直別に良いデザインとも思わなかった。オカムラの製品ページでも高そうな外車のディーラー風のショールームに置いてあるイメージ写真が載っていて、要するにこれは座るためではなく見せるため(見せて高級感やリッチ感を醸し出すため)の椅子なのだな、と理解した。

操作は座面下の各種レバーで行うタイプで、おそらくバロンと同じような機構。これもあまり使いやすくなかった。なんかいじってるうちにロックしてしまって店員さんに直してもらったり。座り心地も特に印象がなく、コンテッサ セコンダに輪をかけて平凡な椅子だった。そのくせ値段は結構高く、元々選択肢に入ってなかったけど早々に見切りをつけた。

オカムラ スフィア

コンテッサ セコンダの隣に置いてあって、いわゆるオカムラのオフィスチェアの典型的なデザインとだいぶ違うので当初はオカムラ製品だと思わなかった。そもそもこのモデルの存在を認知していなかった。せっかくだからついでに座っておくか、と気軽に(期待せず)座ってみたら、ビビッときた。

展示品の仕様は、座面奥行き調節あり・ハイバック・デザインアーム。

座った瞬間、あれっ、座り心地が違うな、と感じた。腰回りを中心に背中全体が軽く包み込まれるような感触で、程よいフィット感があった。背面クッションは硬すぎず柔らかすぎず、ちょうど良い塩梅だった。店員さんによると、背面クッションの中に複数の可動パーツが仕込まれていて、座った人の体格に合わせてフィットするように形を変えるのだという。面白い仕組みだなと思った。

座面の奥行き調整機構もユニークで、座面そのものを前後に移動させるのではなく、座面の前部分の迫り出し具合をレバーで調整できる。これを最大まで前にスライドさせると、単に長さが伸びるだけでなく座面前部分のカーブが上向きになる。この状態だと、脚の膝を曲げたときにちょうど膝の裏で座面の前を包み込むような形になり、カーブが膝裏にいい具合にフィットする。長時間椅子に座っていると脚の位置を変えないと疲れてくるしむくんでしまうので、脚を曲げる動作は割と良くやるのだが、この機構はその動作に実によく合った。

座面の座り心地はコンテッサ セコンダと比べるとやや劣るものの、シルフィーとは遜色ないクオリティで、疲れを感じるほどの硬さはなかった。腰の部分も若干前に迫り出すような形で、控えめなランバーサポートがついているような感じだった。背中から腰にかけての高いフィット感のおかげで、座ったときの全体的な座り心地は座った椅子の中では一番良かった。

リクライニングは座面左下のレバーで行うタイプだが、これはとても操作しやすかった。リクライニング可動とロックの 2 ポジションのみなので把握しやすく、レバー操作も硬くなかった。レバーの位置も良くて、座面下の後ろ側についているのでリクライニングで身体を倒したまま操作できる。シルフィーと比べると操作性の良さは段違いだった。コンテッサ セコンダのスマートオペレーションと比べても遜色ない出来だと思う。リクライニングは三段階でやや物足りなさはあった。

デザインも気に入った。オカムラ製品、特に上位モデルは金属フレームの光沢が重厚感と高級感を演出しているが、スフィアは金属フレームではない。そこだけ見ると廉価なオフィスチェアのような安っぽい仕上げに見えそうだが、後ろ姿が全面一色のファブリック素材なのはとてもスマートかつスタイリッシュで、ゴツゴツした金属フレームやメッシュ地の見た目よりも好みだった。なお、スフィアのカラーバリエーションは張材の色に応じてボディカラーの組み合わせが決まっている仕様で、張材の色にセージ(明るいグリーン)を選ぶとボディカラーは白になる。

展示品はヘッドレストと可動アームレストがなかったが、シルフィーと同じようなタイプの固定ヘッドレストをオプションでつけられること、可動アームレストのオプションもあることを店員さんから聞き、そのオプションを選ぶことにして、最終的にこのモデルに決めた。あのとき展示品に座ってみようと思わなければ買うこともなかったしおそらくその後ウェブでリサーチ・検討することもなかったと思うと、運命的な出会いだったといえる。

店員さんが「オカムラの中では一番新しいモデルで、まだ一年くらいしか経っていない」と言っていた。ウェブで調べてみたらその通りで、2021 年 11 月に発表、2022 年 3 月に発売開始ということで、本当にごく最近のモデルだった。道理でウェブで検索しても比較レビューなどを全然目にしなかったわけだ。

キャスターは通常のナイロンではなくウレタンを選んだ。仕事部屋の床はフローリングなので傷つき防止のためにカーペットかチェアマットを敷くつもりなのだが、その場合どちらが良いのか店員さんに聞いて、「カーペットなど柔らかい素材の上で使うならナイロンが良い。ウレタンだと動きづらくなるという話もある。逆にフローリングや硬いチェアマットの上で使うならウレタンが良い。ナイロンだと滑りすぎる」とのことで、チェアマットも同時に買ったのでキャスターはウレタンにした。同時に買ったチェアマットは、週末は創業祭だか何かの安売りセールの対象で少し安く買えた。

オカムラ製品は納期が五週間〜七週間かかり、コンテッサ セコンダはさらに数週間かかるとのことで、スフィアも今日注文して配送日は最短で 11 月 20 日になるとのことだった。思ったよりも時間がかかるが仕方なし。平日と休日では配送料に差が出るので翌 11 月 21 日の月曜に配送を依頼した。店員さんによるとオカムラ製品は 10 月 4 日から値上げされるそうで、ものによるが 10%〜15% 程度高くなるとのことだったので、選択肢が十分多くなかったとしても今日この場で買おうとは思っていた。どうせ近場で他のモデルをたくさん試座できるような場所はそうそうないし(奥さんが店員さんに「この辺でアーロンチェアを試座できる場所ありますか」と聞いていたが、なさそうだった)、値上げ後にまた同じ店に来て買うのもなんなので。納期もその分遅くなるし。

定価より若干安く販売しており、スフィアが税込 122,000 円、チェアマットが一割引で税込 16,200 円、配送料が 2,000 円で合計 140,200 円だった。バロンだったら椅子だけで 15 万円は超えていただろうから、予算よりも出費を抑えられた。

お店には奥さん同伴で義母の車で連れて行ってもらった(自分はまだペーパードライバーなので)。高い椅子はじっくり納得いくまで座って確かめて買うべし、という数多の意見を念頭に置いて、一時間半くらいあっちに座りこっちに座りを繰り返して決めた。飽きて機嫌が悪くなってきた奥さんの冷たい視線を感じつつも、今回ばかりは断固とした態度で妥協せず納得いくまで座った。最後の方は奥さんが「もういい加減決めなよ、もうこれでいいよ、どうせ今の折りたたみ椅子よりはどれ買ったって良くなるんだし、気に入らなかったら二、三年後にでもまた買い換えればいいじゃん」などと投げやりなアドバイスをし始めていた。

自宅で仕事中に座ってみての感想はまだおあずけだけど、満足いく買い物ができた。ブランドや値段ではなく座り心地で選ぶべし、という意見も肝に銘じていたので、結果的に本命だったバロンや憧れだったコンテッサ セコンダよりはだいぶ安いモデルを選んだけど、実際に座った印象に基づいて正しい判断ができたと思う。座り心地も機能性もデザインも気に入っているし、届く日が待ち遠しい。高級ワークチェアは一生モノのつもりで買うのだという心づもりだったので「次」は考えてないけど、機会があればオカムラのサブリナは一度実物を見てみたい。あのリングフレームのデザインはとても美しい。