@kyanny's blog

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思考の整理学

shelff で届いた本、初回三冊のうちの一冊(シークレット)。ChatGPT によると「外山滋比古による、思考法と発想法を解説したエッセイ集」。

「知的生産術」の文脈では梅棹忠夫の「知的生産の技術」と並び、必ずと言っていいほど紹介される有名な本。いつか読もうとは思っていたので、初回のシークレットで届いたのはラッキーだった。

とにかく前評判が良いので期待値やや高めだったが、四十年近く前に書かれた本だけにさすがに古さを感じた。すでに経験から知っていたり、見聞きしたり、読んだ覚えがある内容がちらほら。おそらくこの本がオリジナルで、その孫引きのようなコンテンツをいくつも見てきたということだろう。二十年くらい前に読んでおくべきだった。

「手帖とノート」「メタ・ノート」などは、これが Evernote 仕事術的なやつの始祖なのかなと思いながら読むと感慨深いものがあった。寝かせたアイデアをメタなノートに書き写す過程で淘汰がうまれる、というのはデジタルノートにも当てはまりそうで、複数のノートアプリを併用する理由にもなる。具体的な書き方なども、参考になるというほどの目新しさはもはやないが、他人のやり方を知る面白さがあった。

他には「とにかく書いてみる」など、やはり書くことの効能について触れたエッセイが印象に残った。書くと安心して忘れられるが、忘れやすくなるので、本当に大事なことはあえてメモするな、など、自分の体験とも通ずるアドバイスも少なくなかった。文庫版のあとがきも、書くことを通じて考えるやり方に触れていて、好みの内容だった。

最初のエッセイ「グライダー」で知識詰め込み型の教育の弊害を指摘し、最後のエッセイの「コンピューター」で知識の詰め込みと引き出し能力ではコンピューターに敵わないから創造的な仕事ができるようにならなければいけない、と回収している構成は上手い。ところで、1986 年の外山滋比古が 2024 年の ChatGPT を見たらどう思うだろうか。

つまらなくはなかったし、まだまだ参考になる部分もあると思うけど、評判ほどの優れた本かな、という点にはやや疑問を感じた。