NASAで開発されコールセンター業務効率化の会社がアルゴリズムにした、人間を文章の組み立て方の特徴で数種類のパーソナリティーに分類する手法の話が一番面白かった。心理学者が理論を組み立てたが実装はIBMで翻訳ソフトウェアの研究をしていたエンジニアが機械学習を使って力技でやった、とか、いかにもありそう。
全般にウォール街嫌い・シリコンバレーベンチャーびいきの傾向がある気がする。原著が書かれたのは2012年でこの本が書き上がるのに2年を要したとあるので、おそらく本を書き始めた2010年ごろはアメリカはまだリーマンショックから立ち直ってなかったんだろうな、とか裏読みのひとつもしたくなる。
アルゴリズムという言葉にはなんとなくムズムズする。ウォール街のクオンツたちが金融取引のために書くコードはそう呼ばれるにふさわしいのだろう。ただ自分のような平凡なプログラマが日々書いているコードとは別世界の存在のようにしか感じられない。
なので、
プログラムを書ける人間にとって 、未来の可能性は無限にある 。複雑なアルゴリズムを理解し組み立てることができればなお良い ─ ─世界を征服できる可能性がある 。
なんて言われても白けちゃうよなぁ、と思った。
あと、アルゴリズムによって多くの職が(専門的なものもそうでないものも)ボットに奪われるかもしれない、と警鐘を鳴らすようなことも書いてあるが、プログラミングの仕事も例外ではない、とは言わないのは不思議だった。あれほどアルゴリズムの万能性を讃えるなら単純なコーディングなんて真っ先にとってかわられるだろうと予言するのは簡単なはずで、「いやいやソフトウェアというものはボットに書けるほど単純ではないのだ」とか「ソフトウェアの難しさはコーディングそのものではなく開発プロジェクトにあり、プロジェクトとはつまり人と人との関係そのものなのでボットだけではまだ解決できない領域なのだ」みたいな深遠なる考えに裏付けられてあえて言及していないようにはとても思えなかった。
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