@kyanny's blog

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ペアプログラミング―エンジニアとしての指南書

最近入社した同僚から「(Quipper では)ペアプログラミングはやっていないの?」と聞かれ、正式な形では実施していないが必要に応じて相手の席に行って議論しながらコーディングしたりすることはふつうにやっているよ、いい機会だから連休明けにでもトライしてみよう、と答えてみたものの、正式なペアプログラミングってどういうものだろう?と疑問に思ったので、そういうものがあれば学んでおこうと思い、 Amazon で「ペアプログラミング」で検索して一番それっぽい本を買った。ペアプログラミングというプラクティスはだいぶ多く言及されているものの、専門に扱っている書籍が(和書では)ほとんどなくて驚いた。

おおまかに分類すると、

  • ペアプログラミングの良い点を挙げる
  • ペアプログラミングを導入するにあたり障害になり得るもの(一人で仕事をしたいプログラマによる抵抗、マネージャの理解を得られない、など)への対処法
  • ペアプログラミングを実践する上で役立つテクニックの紹介
  • 典型的なペアのパターンごとに、理想的な結果、考えられる問題、問題を克服するヒント、の紹介
  • XP (Extreme Programming) / CSP (Collaborative Software Process) の文脈におけるペアプログラミングの紹介
  • ペアプログラミングの発展形の紹介

のようなトピックを扱っている。このうち、一番知りたかったのはテクニックの部分だったのだが、正直ちょっと物足りなかった。厳密に定義されたプラクティスがたくさんあるものかと思っていたが、あんまりそういうこともなく、「コミュニケーションをとれ、休憩をとれ、あとは忍耐が大事だ」ということが繰り返されている感じだった。どれも「そりゃそうだろ」という感じで、心構えをしておく以上の実践的な準備ができそうな指南には感じられなかった。

ペアプログラミング自体についてはそんなわけでちょっと物足りない内容だったが、 XP への言及のところは良かった。そもそも XP の本を読んでちゃんと体系だって学習したことはなく、なんとなくこういうものでしょ?というぼんやりとした理解にとどまっていたが、やはりその理解に輪郭を与えるために原典を読むべきだなとの思いが強くなった。そして、ペアプログラミング自体が XP の文脈から発展してきた部分も少なくないだろうから、きっとそっちの文献で多く言及されていて、改めて専門書として書き下すほどのトピックになり得なかったのかもしれない(だからペアプログラミングを書名に冠する和書が少ない)、と思った。

13年も前に訳された本だが、内容に古さはさほど感じられなかった。訳の質は非常に悪い。日本語として「てにをは」がおかしい箇所が数十箇所はある。そのせいもあって文章がかたく、読みづらいが、内容はまったく難解ではないのが救いだった。出版元がピアソンでもう新書では手に入らず、中古を探すしかないが、そこまでして読むほどの本ではないなと思った。

ペアプログラミング―エンジニアとしての指南書

ペアプログラミング―エンジニアとしての指南書

  • 作者: ローリーウィリアムズ,ロバートケスラー,Laurie Williams,Robert Kessler,長瀬嘉秀,今野睦,テクノロジックアート
  • 出版社/メーカー: ピアソンエデュケーション
  • 発売日: 2003/03
  • メディア: 単行本
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