@kyanny's blog

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採用の潮目を変えるタイミング

二ヶ月ほど前に書いて、いまいち推敲が進まず下書きのままになっていた記事を、お蔵入りにするのもなんなので公開する。


スタートアップ企業に勤めるソフトウェア開発者の知人とエンジニア採用の話をした時に話したこと。ステージとしてはシリーズ A 調達済み、エンジニアは五名以下で、事業拡大のために若干名の増員を予定。欲しい人材(求めるスキル)はだいたい決まっていて、何かアドバイスある?という流れ。

そのフェーズならば「スピードを落とさないこと」が最も重要だ、と伝えた。本物の少数精鋭チームだからこそ順調に駒を進められている、と仮定して、人が増えたらほぼ確実にスピードは落ちる。新人のフォローや協業・分業のためのコミュニケーションはエース級人材のアウトプットを確実に、しかも大幅に損ねる。増員によるチームのキャパシティ増加よりも、エースが時間を奪われることによるロスの方が大きい。だから、今いる優秀なエンジニアたちが 100% のパフォーマンスを発揮し続けるためには、何がブロッカーでどのように取り除けば良いか?と考えて、そこにフィットする人を雇うのが正解だ。

同様の理由で、プロジェクト管理とか組織作りに重きを置く人は、このフェーズでは絶対に雇ってはいけない、とも伝えた。まだ「仕組み」や「ルール」が必要な段階ではない。乱暴な言い方をすれば、世の中の著名な方法論というのは、「平均レベルの人材を集めて平均レベルの結果を出す」ためのものであり、野望に燃えるスタートアップには適さない。平均レベルの結果では生き残れないし、勝ち上がれない。言うなれば、毎日が「有事」なのだ。「平時のリーダー」など必要ない。

しかし、もう少しフェーズが進むと事情が変わってくる。EXIT が見えてくる頃合いになったら、「平時」になった後のことも考えないといけない。アウトプットに波がある凄腕プレイヤーよりも、「そこそこ」の結果を安定して出せるグループが求められるようになってくる。変化の時はほぼ確実に訪れる。いつ、どのくらいの速さで起こるかは分からないが、そこが採用の潮目が変わるタイミングだ。