@kyanny's blog

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フェーズ

Quipper を辞めると決心して転職活動をしていた頃、声をかけてくれた会社の中に古い知人の勤務先があった。日本人が創業した SaaS スタートアップで、順調に資金調達し、製品の特徴も相まってグローバル展開を進めていくフェーズで、本社は日本ながら外国人を多数採用していて英語コミュニケーションも多い、とのことだった。

結局辞退したのだけど、知人の「このフェーズはもう経験済みだから、ってことですかねー」という何気ない一言が印象に残った。その時はあまり意識してなかったが、その後時間が経つにつれて、「フェーズ」というものを意識するようになった。

出世とか年収とかそういうのとは違うし、「成長できる環境」とかそういうのともちょっと違うけど、「これまでと違う経験」を追い求める、というのは自分の行動原理の一つである気がする。Quipper では実に様々な経験をさせてもらったけど、「フェーズ」で考えると、スタートアップの創業期〜成長期〜EXIT(買収)〜PMI(Post Merger Integration)と組織拡大〜組織崩壊〜組織再編、といったあたりを一通り体験したことになる。なので、スタートアップ企業については「だいたいどのフェーズも一通りやった」というのはある。当時登録して退会しないままになってるスカウト系サービスで、ちょくちょく「成長期」〜「EXIT直後」あたりのフェーズの会社のアンテナに引っかかっているようだけど*1、正直惹かれるものがないのは、「また同じようなことやってもなあ*2」と思ってしまうからだろう。

「日系の外資」は「外資」とは違う、というのも同じ文脈で、「フェーズの違い」として意識している。会社によって千差万別だろうし自分の経験は N=1 の話に過ぎないとはいえ、やはり「トップが日本人かそうでないか」は企業の文化やコミュニケーションのあり方、特に英語の必要性において大きな差を生むと思う。なんだかんだいって最後は母国語が通じるというのは、絶大な安心感があると同時に常に安全な逃げ道があることによる一種の気の緩みにも繋がる。よほどストイックに自律できる人たちの集団でない限り、なし崩し的に楽な日本語コミュニケーションが主流になってしまうことは避けられない。それでは本当の意味で「世界で通用する人材」にはなれないー少なくとも英語コミュニケーション能力の点ではーそれを痛感したからこそ、大変でも背伸びしてでも「英語で意思疎通できないとマジで生き残れない環境」に飛び込む、そこでもがくのが、いまの自分にとって選ぶべき適切な「フェーズ」なのだと思う。

*1:それなりに金があって人が足りなくてオーガニックに採用できる知名度はない、というのがそういう企業だから

*2:特にしんどいフェーズや役回りは、Quipper だからこそ頑張れたのであって、恩義も思い入れも人との絆も大してない会社でやる気にはなれない