shelff 六回目の一冊。
エレガントな問題解決策を思いつく障害となる7つの「思考の落とし穴」とその回避方法について述べた本。
以下にまとめるが、もともとよくまとまった構成になっていて読みやすかった。
しかし、冒頭から「発想力クイズ」みたいなのがいつくか出されて、おれはそういうのが苦手なのだが、案の定「最高のソリューション」は自力で思いつけず、プライドを傷つけられた気がして本書への印象は悪くなり、「どうせおれにはできやしないさ」と投げやりな気持ちになった。そういう反応も「落とし穴」なのだと著者は言いたいのだろうけど、読み終えても「よし、この本を何度も読んで思考力を高めるぞ」などという前向きな気持ちにはならなかった。
問題解決につながらない(Misleading)
1. 飛躍(Leaping)
結論を出し急いでしまう。
解決策
フレームストーミング(Framestorming)。ブレーンストーミングに似ているが、答えではなく疑問をどんどん出す。
2. 固着(Fixation)
パターン化された思考にこだわる。
解決策
反転(Inversion)。正反対の要素から考えてみる。
3. 考えすぎ(Overthinking)
かえって物事を複雑にしてしまう。
解決策
プロトテスティング(Prototesting)。プロトタイプ+テスト。仮説を実験する。
平凡すぎる(Mediocre)
4. 満足(Satisficing)
それなりの答えで納得してしまう。
解決策
合成(Synthesis)。「AかBか(どちらか片方)」ではなく「AもBも(両方)」を得ようと考える。
5. 過小評価(Downgrading)
できるはずがないと思ってしまう。
解決策
ジャンプスターティング(Jumpstarting)。Can if テクニック(もし〜なら…できる)を使う。
思慮がない(Mindless)
6. 自前主義(Not Invented Here NIH)
外部の意見ややり方を拒絶する。
解決策
社外で開発されたアイデアを堂々と採用する(Proudly Found Elsewhere PFE)。ハッカソン。
7. 自己検閲(Self-Censoring)
自分で自分のアイデアを握りつぶしてしまう。
解決策
セルフ・ディスダンシング(Self-Distancing)。客観的な部外者の視点で見る。
つまり、こういうことだ。ジャムや仕事を選ぶときには、ほどほどに良いものを選ぶというのはきわめて健全な戦略だ。しかし、より高次の決断を迫られているときやより大きな影響力のある解決策が決められているときには、最善の解決策を追い求めてさらなる検討を重ねる必要がある。 p158
仕事選びはジャムを選ぶのとは比べものにならないくらい「高次の決断」だと思うが…
私が本書を書いた目的はそこにある。これだけは確信を持って言える。勝利がどういうものかをどれほど明確にしようと、勝利を収めようとしない限りは、どうすれば勝利を収められるかを考えようとは決してしない。そして考えようとしないなら、その実現に向けて行動を起こすこともない。 p191
人間の頭はエネルギーを節約するようにできているため、新たなアイデアに対しては無意識のうちに抵抗する。それはそのアイデアが悪いからではなく、アテンション・デンシティを高めて神経細胞を新たに連結することに膨大なエネルギーを費やしたくないからだ。 p218
ここはためになった。
直観に反するようだが、他人のアイデアを受け入れるよりも自分で思いつくほうが認知機能的には簡単で、なおかつ精神的な満足感が大きいのである。 p219
ここも。
4年間にわたっておよそ100の記事を書くうちに、たとえ自分のアイデアと相容れないアイデアであっても、そのアイデアを正しく評価することができるようになった。また、他人のアイデアを世の中に広めることの楽しさも発見した。 p228
・自分の限界を知り、自分のことは後回しにする 「自分はクリエイティブではないし、イノベーターでもない」と断言する自己検閲的な声がここでも聞こえてくる。 p232
だって、実際にそうだもん。
・目も心も閉じる 目を背けて現実を直視しようとしない。新たな知識やテクノロジー、さまざまな働き方など、自分の周囲で起きている変化や混乱はすべて一時的なブームに過ぎないから、そんなものを学ぶことにエネルギーを費やすことはないと考える。 p233
7つの思考の致命的な欠陥の中で最も命取りになるのが、この自己検閲的思考だろう。 想像力に自分でフタをするのは愚かな行為であり、長期的には自分の生まれながらの好奇心や創造性を失うことにもつながるからだ。 p235
問題は、私自身の自己検閲的思考が私をためらわせていることだった。ランガーに断られるかもしれないという不安がそうさせていた。「エレン・ランガーは私のことなんてまったく知らない。彼女は超のつく有名人だ。私と会う時間など彼女にはないだろうし、たとえ時間があったところで私と話をしようとは思わないだろう。そんなことは実現しないだろう」という自己検閲的思考のささやきが聞こえるような気がした。 だがエレン・ランガーが私のことを耳にしたことがないと、どうして私にわかるだろう?本当はわからないのである。彼女が私と話をしようとは思わないと、どうして私にわかるだろう?本当は、わかりはしない。 p244
「マインドフル」な状態に達するためには、瞑想という特殊な方法が不可欠であるとするのが東洋的な考え方だ。心を静めて思考を一時的に停止することを目指すのが東洋的なマインドフルネスで、西洋的なマインドフルネスとは方向性がほぼ逆である。 p249
同じ言葉に逆の意味を持たせるなんて、迷惑な話だ。