1-3 で敗北。監督交代後の初戦は黒星スタートとなった。
メンバーを大幅に変えてきた金沢。FW 杉浦と GK 白井のベテランが揃ってスタメン、FW パトリックと MF 四宮はベンチスタート、四宮に変わって左の WB に西谷和希。MF 西谷優希はベンチ入りせず。累積警告による出場停止は前節のみだったはずでは?
フォーメーションはさすがに大きくいじることはなかったが、予想通り守備にウェイトを置いてきて最終ラインはこれまでよりかなり低めに。そのぶん広く開いた左右のスペースを使って前半 15 分くらいまでは金沢ペースで攻めるも、決定機を作れないままペースダウン。ここ数試合は決定的なシーンを決めきれず、という展開が続いたことを考えるとむしろやや後退してしまった印象。
沼津は開幕以降 13 試合未勝利で最下位に沈んでいたが、試合運びは悪くなかった。長身の FW 9 番が足元で納められずにチャンスを潰してしまい、金沢としては助かったシーンが多かったが、中盤の選手は体幹が強く球際で勝ってボールを繋ぎ前に運ぶ、まるで伊藤彰金沢のようなプレースタイルだった。うまく崩せないときに最終ラインでボールを回しがちなのもそっくりだった。
試合開始 10 秒で金沢ゴールに迫って以降、守勢に回っていた沼津だったが、ゴール前の直接フリーキックを決めて先制。これは見事だった。GK 白井がまったく反応できず、逆をつかれたような反応だったので、てっきり壁に当たってコースがずれたのかと思ったら、壁の左下を綺麗に通していた。キッカーの前にボールをまたいだ選手のフェイントも効いていて、リプレイをみると壁が反応して動き始めてしまったのでコースを消しきれなかったようにも見える。キッカーの精度も素晴らしかったが、チーム戦術で決め切った一点だった。
金沢の前半の見せ場は、GK 白井のパントキック一本で最前線に残っていた杉浦に繋いだカウンターのみ。あの判断は見事だったが、沼津 DF の勇気あるタックルに阻まれた。PK になってもおかしくないシーンだったが、際どいところだった。書きていてふと思ったが、後半金沢が PK をもらったのは、このとき主審がファウルを取らずに流したことの埋め合わせ的な意味もあったのだろうか、と邪推。
後半、金沢は杉浦に変えて FW 土信田を投入。DF 小島がエリア右から侵入する際に相手と接触して転倒、これが PK 判定になり、土信田が決めて同点に追いついた。しかし、これは誤審だったと思う。映像で見ても小島が倒れ始めた位置はエリアの外だったし、ラインの外にスパイク跡がくっきり残っているのも映った。
これで振り出しに戻ったかと思いきや、その 2 分後に波状攻撃で押し込まれ、突き放される。この辺りから手詰まり感が出てきた。お互いに交代のカードを切って迎えた終盤、J2 いわきからレンタル移籍でこの試合が初陣の FW にエリア外からダメ押しの 3 点目を決められ、勝負あり。このシーン、MF 大山が入れ替わられてピンチになったが、その大山は必死で走って追いかけていて、追いつけなかったものの 80 分以上プレーしてきてまだあの気迫を見せたのは立派だった。一方、ドリブルで運ぶ相手 FW の前にいた DF 山本と長倉は、数的優位にも関わらずチャージにもいかず正面のコースを消さずズルズルと後退するのみ。GK 白井の位置どりも低く、かといってロングシュートを止めることもできず、お粗末な守備だった。
GK の位置どりは、最終ラインの高さや全体の配置にもよるとは思うので山ノ井と白井を単純に比べてもあまり意味はないとは思うが、これまでのハイラインを底で支える山ノ井の超前身守備と比べると、白井の守備は消極的で迫力に欠ける、という印象が強く残った。
沼津はこの試合、Jリーグ通算 100 勝目がかかっていたが、見事にメモリアル勝利を献上してしまった(他のチームは 13 試合連続でそれを阻止してきたというのに!)。開幕以来の勝利とレンタル移籍選手の移籍後初出場初ゴールまでついて、沼津は最下位を脱出。金沢は前節の琉球に続けて二試合連続でリーグ最下位に敗北を喫した。
正直、今日の一試合だけで辻田新監督の力量を測ることはできないと思う。ましてや、この結果だけで責め立てたり、監督交代を口にするなど馬鹿馬鹿しいにもほどがある。しかし、伊藤彰サッカーの良さをスポイルし、戦力的にも魅力的にも最大の武器であるパトリックの起用を減らし、誤審でもらった PK 以外は枠内シュートもろくに打てなかった、というのが金沢の現在地点だという事実は動かしようがない。
一年半やってきた伊藤彰監督と同じ条件で評価するのは厳しすぎると思うから、5 試合はもちろん、10 試合はどんな結果でも不問のつもりだ。ただ、その間に「どういうサッカーで如何に戦うのか」というビジョンを描き、ピッチ上で表現できるところまで昇華して欲しい。伊藤彰サッカーの踏襲であれ、もっと泥臭い現実主義のサッカーであれ、方向性を示して欲しい。それがなければ、宮崎への移籍を決断した DF 櫻井のように、新天地を求める選手があとをたたない、チーム崩壊、という最悪の展開だってあり得る。