@kyanny's blog

自分の不名誉になるような考えを最初に大胆に表明することは、自立への第一歩となる - ニーチェ ドイツ哲学者

「電車男スタイリング・バイブル」を読んだ

電車男スタイリング・バイブル ファッションオタクより愛をこめて

電車男スタイリング・バイブル ファッションオタクより愛をこめて

Kammy+さんのレビューで興味を持ったので買ってみた。

感想:ギャハハハハ!めちゃめちゃ面白いわこの本は!!

一番傑作だったのが、全国のファッション専門学校の学生が応募したデザイン画のグランプリをとったひとのコメント。「〜〜を着せました」みたいな、まるでマネキン人形で着せ替えごっこをしてるかのような言い方は、業界的にそういうものなのかもしれないからいいとしても、コーディネートの注意点は本気で笑った。

無理に「脱・オタク」をすることはないのでは?と思い考えました。
いつもパンツに入れているシャツは出すことはないと思ったのでそのままにしました。
コンバースの靴紐をしっかりしめてもオタクに見えないのでしっかりしめて履いてほしいです。

大戸屋で飯が来るのを待ちながら、隣で女子二人組が食事してるのに「うはw」とか声出して笑った。このひとには是非プロのデザイナーになって服を作って欲しいなあ。この本に出てきたひとたちのなかで、最もアキバ君やオタクを理解しようと努力していると思う。

その他のデザイン画については、Kammy+さんがすでに言及しているように、とにかく金がかかりすぎる。全体でも単品でも値段が高すぎ。8万のレザージャケットなんて誰が買うんだ。

全体的に突っ込みどころが多すぎて抱腹絶倒の極みだったのだが、一貫して流れてる「オシャレさんたちがアキバ君を見下ろすノリ」は、ひとによっては相当不快だろうなと思った。二日で変身コーナーの、「美容院で髪を切るときは、『とにかくカッコよくして』と言いましょう」とか、「セレクトショップでトータルコーディネートしたら『このまま着て帰ります』といいましょう」とか、絶対悪乗りして書いてる。オシャレさんのノリで勢いあまって書いてる。そうでないなら、残念なことに著者はアキバ系とかオタクとかのことを何も、1%すらもわかってない。

セレクトショップ、ブランドショップのデータが載ってるページがあったんだけど、これがちょうどいい素材なので例にとってみよう。紹介されているものの中で一番低スコアなコムサでも、10点満点で「お財布圧迫度」、つまり商品の価格が4点との位置づけ。他の項目も5点前後くらいなんだけど、5点平均が最低ランクっていうラインナップがそもそも大間違いだ。これにしたがうならアキバ系ファッションはオール0点なのだから、まず1点、2点クラスの服や靴をそろえていくことから始めなきゃならない。そういう視点がないならアキバ君に振り向いてはもらえない。

この本を、たまに気に障る点はありつつも怒りを感じることなく笑って読めたのは、俺自身がすでに初心者を脱していて、余裕があるからだと思う。一人でマルイとかで服買えてますから!ジーンズ一着靴一足に2万円出せますから!けど、今日着てたセーターは父親のお下がり。そういう、イタさと普通のハイブリッドな俺がこの本を読んで感じたのは、飛躍しすぎてるってことだ。

自分の話をすると、高校生までは母がしまむらで買ってきた服を着ていた。だって小遣いは中古ゲームソフト買ったらなくなっちゃうし、部活の規則でバイトはできなかったから服買う金なんてなかった。唯一買ったファッションアイテムといえば、スラムダンク全盛のあおりで流行ったナイキのエアマックス。二年は履いた。灰色の塊と化した。大学へ進んで一人暮らしを始めて、自分で服を買い始めたが、最初は自分のセンスのなさを遺憾なく発揮して、「え 合羽?」と思われるようなまっ黄色のウィンドブレーカーを毎日着たり、砂漠迷彩柄のごわごわしたパーカーを買って二度と着なかったり、散々な買い物ばかりだった。買う服買う服、持っているどの服とも致命的に色やらなにやらが合わないという絶望的な期間を経て、「無難なものをそろえなければならない」と気づき、ちょっとずつ方向転換していった。けど、巷のファッション指南みたいに、いきなり全身コーディネートで10万円とかは絶対無理だった。「わかった、とりあえず今1万だそう。次に服に金を払うのは半年後だ」とかそういう価値観だったし、DVDなんて一枚も買ってないのに金もなかった。

そう、やっぱり最大のネックはお金だと思う。装うという点からファッションに一切支出してこなかったものからすれば、マルイのバーゲンで投げ売りされてる5000円のパンツだって十分高い買い物だ。美容院にしても、居心地が悪そうなのはもちろん、高そうだというのも怖いポイントだ。印象としてはぶっちゃけぼったくりバーみたいなもんだ。チャラチャラして怖そうな兄ちゃんとキラキラしてキレイな姉ちゃんがてぐすねしてるんだから似たようなもんだ。継続して毎月1万円分服を買うのも無理だし、半年ごとに6万ずつどーんと出すのも無理だ。ない袖は振れないし、たとえ金があったとしても一銭も出さないという価値観なんだから、万単位で金を出すなんて到底無理だ。

なんか支離滅裂になってきたけど、ファッションオタクを自称するひとたちは、ボトムズのDVDBOXに10万出せるのか?という話だ。古いアニメのDVDに10万なんて絶対無理!と思うはずだ。それと全く同じ感じ方なんだ。よさがわからないのだから一円だって出す気にはなれないんだ。そして、よさを知ってもらう、「そんなに悪いもんでもないよ」ってことを伝えるには、この本は掘り下げ方が甘かった。最初に「装う楽しさ」を教えようとしてもダメだ。最初は「シンプルな綿のパンツが必要だから、買え。一万円だ」とか、そういう事務義務した入り方のほうがいいんじゃないか。ファッションの必要性について理屈で納得できない上に感情で反発してる状態なんだから、感情に訴えても無駄だ。手持ちの理屈を上回る理屈で上書きしてやれば、しぶしぶながらも言うとおりにするものじゃないだろうか。「そういう理屈なんだから、仕方がない」と自分に言い訳もできるし。