半年くらい前に、ショッキングなタイトルにつられて買った本。数ページ読んであまり面白くないなあと本棚に入れっぱなしにしてあったのをまた引っ張り出してきて半分くらい読んで、こりゃダメだと思ったので感想を書いて捨てる本の山行き。
まず文章がとても読みづらくて知性を感じさせない。例えばこんな感じ:
私はコーヒーが好きだ。カフェインは中毒性があるので身体に悪いという人がいる。私は良いと思う。コーヒーは嗜好品だ。多少の贅沢はかまわない。
この文章のどこが気持ち悪くて知性を感じさせないかというと、接続詞が全然ない。機械に文章を自動生成させて、それを人間がつなぎ合わせて製本したものを読んでいるような気がしてくる。この読みづらさを表現するのに、上の例ではまったく不十分だ。
それから、この著者が Windows な環境が専門の開発者だからなのだろうけど、本の中身で唯一意味がありそうに思えた C++ は必修だから身につけておけ、というのも、あんまり響いてこなかった。だって世の中、デスクトップアプリケーションの時代は終わってなんでもウェブアプリケーションの時代になる、と言われてすでに数年たって Google がオフィスもメールもウェブブラウザもタダで提供してる時代なんだぜ?「そのタダで使えるソフトウェアは C++ で書かれているんじゃないの?」ってのはおっしゃるとおりそうだろうけども、じゃあ Google 社製アプリケーションのソースコードを(それが自由に読めたとして)理解できたりそれに類するものを自前でかけたりしないと IT技術者として生き残れないというのだろうか。そんなこと言い出したら IT技術者なんて一人も生き残れないんじゃないのか。
あとは、著者がこの本のために行ったとは思えない、たぶん他の仕事でしたインタビューの記事と、ブログにでも書いておけばいいようなオチも結論もない書きっぱなしコラムを寄せ集めて、適当に編集して出版してみました、という感じ。特にオフショア開発がどうとかいう企業の重役とのインタビューとかは、まったく読む価値がない。コラムも、本編であるはずの第何章、みたいなページより倍も多かったりして、この本編集した人はアンバランスだと思わなかったのかと不思議に思う。
C++ の作者のインタビューが載っているので、それを読みたい人は本屋でその章だけ立ち読みすればいいと思う。前半がそんな出来だったので、後半もどうせろくなことは書いてないんだろうなと思って、思い切って読むのをやめた。レバレッジ・リーディングにも、雪山登山と同じで引き返す勇気が必要だと書いてあったし。
この本から学んだことは、文章は品位や知性を計るものさしになるので注意深く書くべきだということと、「IT技術者」なんて用語をタイトルに使ってしまう本はろくなもんじゃないということと、「見るからにダメそう」と思った自分の直感をもっと信じよう、の三つだった。
・・・と、ボロクソにいっておいて実は自分のほうがズレてたらどうしよう、と一抹の不安を抱きつつ Amazon のレビューを読んでみたらやっぱり同じようにボロクソのレビューがついていた。改めていうと、こんな本買ってはいけません。テーマにも内容にも著者の文章力にも編集者の構成力にも、全くお金を払う価値がありません。
- 作者: 豊田孝
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2008/03/20
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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