shelff で届いた本、初回三冊のうちの一冊。ビジネス文書の書き方を指南する本。
レビューを読むと、第一部「書く技術」が一番重要で、残りはオマケという意見もあった。そもそも、第三部「問題解決の技術」などは新版になって追加されたもののようで、この本の本質は「書く技術」にある、という理解は間違ってなさそう。なので、この本を読むうえで、第一部を読み終えたら読了とみなして良い、とゴールを設定した。その第一部まで読み終えたので、一旦感想を書く。
この本では、ビジネス文書はピラミッド原則にのっとって書きなさい、と提唱している。ピラミッド原則とは、こういう構造のこと。
いわゆるロジカルシンキングの手法の一つ、といっていいだろう。著者のバーバラ・ミントはマッキンゼー初の女性コンサルタントだそうで、バリバリのロジカルシンキングの人だ。
ピラミッド構造だけだと非常にシンプルに感じるが、本書ではもう少し詳しい書き方も指南している。なかでも特に重要視してページを多く割いていたのが「導入部をストーリー形式で書け」という点で、しかしこれは説明や例を読んだだけでも、実践するのはなかなか難しそうだなと感じた。ピラミッドの二段目以降、上部のメッセージを支える複数のサブメッセージの構成方法(演繹的 vs 帰納的、どちらをどんな場合に使うのか)の解説も、難しいが説得力があった。メッセージの中身を反映する見出しをつけろ(単なる分類のための見出しをつけるな)、というのもためになった。
この本自体がピラミッド原則にのっとって書かれている(はず)、ということだけでなく、著者の語り口と論理展開が極めてロジカルで、言わんとすること、原則(プリンシパル)に関しては非常に理解しやすい。しかし、例はあまり良くない。説明した原則をどのように適用しているのか、例文を読んだだけではピンとこない。そのせいで、ピラミッド原則そのものが難解なものであるという印象を与えてしまっている。
ピラミッド原則について説明しながら、そもそもビジネス文書とは何か、といった点に繰り返し触れている点も良い。ビジネス文書は、読み手が知らないことを伝え、読み手の疑問に答え、読み手の問題解決を助けるか、読み手が書き手の望む行動をとるよう促す、などのために書かれるものであり、したがってピラミッド原則にのっとって論理的に書かなければならない、と説く。単に文書作成のテクニックを伝授するだけではなく、そもそも何のために書くのか?書く目的を達成するためには何が必要か?と原理原則に立ち返る姿勢が素晴らしい。この本の N 番宣じに相当するビジネス書は山ほどあるし、おそらくもっと読みやすいものもあるだろうが、原理原則を軽視しないところはさすが原典といえる。
期待に違わず第一部は面白かったので、第二部以降も折を見て読み進めていきたい。この本は shelff の引取りサービスには出さず、手元に置いておくつもり。