自分の人生は自分で決めるものだ、という価値観がいつ芽生え、いつ自覚したかは覚えていないが、クローン病になったことが自分の人生観に多大な影響を及ぼしたことは確信している。人生万事塞翁が馬。
だから人生において「選択肢は多い方が良い」という信念みたいなものがあって、なので何か大きな意思決定をするときも将来の選択肢が増えるほうを選ぶ、ことが多いと思う。未来予知ができるわけじゃないのであまり精緻に比べはしなくて、要するにカン。面白そうなほう、不確実なほうを選ぶ、といいかえてもいい。不確実ってことは選択肢がどのくらいあるかわからないってことで、そのほうが面白い。選択肢がいくつあるか、つまり未来の可能性が、あらかじめ具体的にわかってしまっているよりは。逆に、選択肢が減ることに対する恐怖感みたいなものすらある。
なのだけど、人生を左右するような大きな選択ではない、日々の仕事や生活においてはむしろ選択肢が少ないほうが楽だし、おれは制約が多い方が創造的になれるとも感じていて、というかそもそも全くクリエイティブな人間ではないので無からなんでも自由に創造できますとか言われても途方に暮れてしまう(だから芸術全般、特に絵画が苦手)、あと着る服とか食べるものとかそういう興味がなくて究極どうでもいいものについては考えるのが面倒だし選びたくもない、だからいっそ選択の余地がないほうがよい、と思うことはよくあって、自分でも矛盾していると思うが問題の質が違うから、というので納得はしていた。
が、ここ数日、人生を左右するような大きな選択をする機会において、思っていたよりずっと多くの選択肢に直面して正直だいぶ戸惑ってしまっており、自分がこの問題においてまさか選択肢の多さに迷うだなんて思ってもみなかったのでショックを受けてもいる。おれの信念はこの状況をよしとするんじゃなかったのか、一体どうしたんだこれこそ自己矛盾してるじゃないか、という。実はおれはこれまで人生を左右するような大きな選択なんてろくにしてこなかったんじゃないのか、だから慣れない状況に置かれてフリーズしてしまってるんじゃないのか、などとぐるぐる考えだすと止まらなくなってしまう。