立憲民主党所属の衆議院議員、小川淳也の政策に対するインタビューと生い立ちについて書いた本。
小川淳也は映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」で注目を集めた若手議員で、観てはいないもののタイトルは見かけたことがあって意識の片隅にはあったが、人物像や政策と結びついてなかった。
元旦の「朝まで生テレビ」に出演していて、そういえば以前も「朝生」だったか別の政治討論番組だったかで消費税率25%で北欧型の福祉国家を目指すという主張をして叩かれてた政治家がいたな、それがこの人だったかと初めて繋がった。
以前見たときから「人口が減る今後の日本で、人口が増えていた頃と同じやり方は通用しないから、人口も経済も右肩下がりになる前提で持続可能な社会を作らなければ」という主張には一貫性と納得感があると思っていた。もっと詳しく知りたいと思い、この本を読むことにした。
「清廉潔白」。小川淳也を一言で表すなら、これだろう。政治家にこうあって欲しい、政治家はこうあるべきだと思いつつも、現実の政治家には最も相応しくない言葉だろう。彼の主張・思想はあまりにも大義に忠実で純粋で、一個人としては感銘を受けたが、世代を超えて大衆の幅広い支持など得られそうもないし、ましてや総理大臣になれるわけがない。
もし本当に小川淳也が総理大臣になったら、いやなれる社会だったなら、それだけで日本は大きく変わる、すでに変わっているだろう。そのくらい極端な政治思想だ。つるまず、派閥を作らず、いや作れずに一匹狼然としているからこそ頑なに意思を貫けるのだろうし、だからこそ味方も増えなければ権力も得られない、というジレンマを感じる。
こういう人にはごく一握りの強烈なシンパがいるもので、アマゾンにはあり得ない長さのレビューが投稿されている。実に17,000字。もはや論文だ。長すぎて全部は読んでないけど、書きたくなる・語りたくなる気持ちはわからなくもない。
本の中に「田舎のエリートにありがちな使命感の強さ」という人物評があった。読んでいてイメージしたのは、明治維新の志士。本気で「国のため」と働き戦った人々を連想した。本の冒頭、著者が「小川が政治家に向いているかどうか、結論が出ない」と言っていた。真面目で純粋すぎる人となりは、そういう人物こそ政治家に向いている世の中であって欲しいと切に思うものの、政治が人間の集団による人間の集団のためのものである以上、やはり全然向いていないといわざるを得ないだろう。
小川が明治維新の時代に生まれていたら、後世に名を残したかどうかは別として、国の未来のために心ゆくまで働けただろうと思う。平時ではなく非常時にこそ支持されリーダーシップを発揮するタイプのように思える。不幸なのは、彼にはいまがその非常時、その始まりの時期であると認識できているのに、ほとんどの人はそうは思っておらず、したがって彼の政策の過激さは到底受け入れられないということだ。
本にも出てきた日本の人口推移グラフ。小川淳也は2030年には60歳、2050年には80歳になる。人口の急減に伴って経済・国力が衰え、誰の目にも日本が衰退しているとわかる時代がもしも残念ながら来るとしたら、そのときこそ小川の政策が真剣に検討されうるかもしれないが、その頃には小川はもう歳をとり過ぎている。傘寿を迎える頃に総理になるのでは遅すぎる。
小川は生まれてくるのが150年遅かったか、あるいは30年早かったんではないか。2050年、人口一億人を下回ってなおも下がり続けることが確定的な時代に50歳で総理大臣になっていたら。そんなことを考えてしまう。