@kyanny's blog

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先日オンライン飲み会で元同僚と話したとき、教育事業の会社から FinTech の会社に転職したことを「フェアさを大事にする人だという印象があったので、『貧テック』と揶揄されたりもする業種を選んだのは意外だった」と評された。

それ以来、去年の振り返りで、「仕事・キャリアにおける大きな目標がなくなった」と書いたことと共に隙間時間にこれらのことをしばしば考えている。

指摘された通りおれは何事においても「公平さ」を非常に重視する傾向がある。教育事業、特に新興国市場向けのサービスは、「良い教育を受ける機会を増やす = 公平さを増やす」という点で自分の志向とよくマッチしていた*1

とすると、自分の志向とマッチする仕事・業種というのは、国際機関とか NPO みたいな方向性なのだろうか。いわゆる「公益性の高い」仕事。それも、グローバル規模でド直球の。ありな気がする。実際、そういう活動には若い頃から多少の関心を抱いてきた。

もう十年かそれくらい、ユニセフと国境なき医師団に毎月少額を寄付している。ユニセフはおれが子供の頃、母親が年に一度くらい、やはり少額を寄付していた。国境なき医師団は、十代後半、たしか高校生の頃にテレビでドキュメンタリーを観た。それらの出来事がずっと印象に残っていて、自分がそれらの組織で働いたりボランティア活動をしたりするのは到底無理だがせめて寄付くらいは、といつからか始めていた。

若い頃なら「到底無理」でもなかったかもしれないが、さすがに四十を過ぎてから NPO でフルタイムの職を得るというのは無理があるように思える。畑違いだし、これまでのキャリアを活かせない。収入面でもおそらく難しいだろう*2

だが、可能性ゼロということはないだろう、とも思う。ある程度の規模の組織なら IT 管理者のような仕事は、ポジションは多くはないだろうが、たるにはあるだろうし、もっと直球の、直接ソフトウェアを扱う仕事も、さらに少ないとは思うが、無くはないだろう。たとえば、ウィキメディア財団でウィキペディアのシステム開発・運用をする仕事、とか*3

ではおまえは NPO で働きたいのか?というと、そういうわけでは…というか、「NPO」というくくりではなくて、おそらく「この活動なら」と強く共感できることをしている組織があり、そこに自分の専門性を活かせる仕事があり、条件面も妥協しなくてよい程度なら、タイミングによっては真剣に検討するかもね、という、要するにただの空想。

空想なのだが、それをいったら今の仕事だって十年前の空想だったわけで、ある意味「思考は現実化する」を地でいったともいえる。であれば、「十年後は国際的な公的機関で公益性の高い仕事をしている」という空想を、とりあえず言語化してみるのも、キャリアの新たな目標(仮)の方向性の一つとしては、面白いんじゃないか、とも思う。

*1:その一方で、マクロな視点ではすでに十分良い教育を受けている日本の学生に対して低料金のサービスを提供することにはそこまで意義を感じなかったし、経済的な余裕がある家庭の学生に付加価値の高いサービスをより高額で提供することにはもっと意義を感じなかった。

*2:NPO 職員の給与は営利企業、特にソフトウェア企業に比べて低いはずと仮定している。

*3:ほぼ間違いなくフルタイムで雇用されている人がいるはずだし、実際過去にポジションが空いてるのを見たことがある。